AEDの付加価値は設置場所と関連している

提供元:ケアネット

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公開日:2011/02/09

 



米国で院外心停止後最初に記録される心室細動や無脈性心室頻拍が、30年前は約70%であったが現在は23%と劇的に減少しているという。ジョンズ・ホプキンス大学のMyron L. Weisfeldt氏らは、「無作為化試験により、公共の場へのAED普及が院外停止後生存を向上させているという結果、一方で家庭へのAED設置はメリットが立証されないことを鑑みると、心室細動や無脈性心室頻拍が院外停止後最初の心拍である可能性が示唆される。このことは公衆衛生施策において非常に重要なことで、AEDのような蘇生術戦略の付加価値は、設置場所と関連している可能性を示唆する」として、心停止発生場所、不整脈のタイプと、生存割合との関連について評価を行った。NEJM誌2011年1月27日号掲載より。

自宅または公共の場での、院外心停止発生例を評価




Weisfeldt氏らは2005~2007年にかけて、米国7地域とカナダ3地域で院外心停止の前向きコホート試験を行った。

評価は、自宅での心停止発生と公共の場での心停止発生における、心室細動または無脈性心室頻拍の頻度、生存退院率について比較検討して行われた。

評価された院外心停止は1万2,930例であった。うち公共の場での発生例が2,042例、自宅発生例が9,564例であった。

生存退院率、同じ「素人・AED利用目撃例」でも「自宅」に比べて「公共の場」は2.49倍高い




自宅発生例の心室細動または無脈性心室頻拍の発生率は、救急医療サービス(EMS)隊員の目撃例は25%、通りすがりの素人の目撃例は35%、AEDを利用した素人の目撃例は36%だった。公共の場での発生例についての同率は、それぞれ、38%、60%、79%であった。

EMS隊員、素人、AED利用の素人それぞれが、公共の場で、心停止後最初の心室細動または無脈性心室頻拍を目撃した割合は自宅での目撃に比べて、EMS隊員は1.63倍(95%信頼区間:1.13~2.35、P=0.009)、素人は2.28倍(同:1.96~2.66、P<0.001)、AED利用の素人は4.48倍(同:2.23~8.97、P<0.001)であった(すべて補正後オッズ比)。

生存退院率は、いずれの目撃例でも自宅よりも公共の場での発生例で高かった。最も高かったのは、公共の場・AED利用の素人による目撃例で34%であった。一方、同じAED利用の素人による目撃例でも自宅発生例では12%だった(補正後オッズ比:2.49、95%信頼区間:1.03~5.99、P=0.04)。

Weisfeldt氏は、「EMS隊員あるいは素人が院外心停止を目撃していたかどうかにかかわらず、また素人がAEDを利用したかどうかにかかわらず、心停止後最初の心室細動または無脈性心室頻拍の発生は、自宅よりも公共の場の方が非常に高かった」と述べ、「簡単で効果的なAEDのような蘇生術戦略の価値は、場所によってより高めることができる」とまとめている。

(武藤まき:医療ライター)