住民ベースでの高感度定量法は、構造的心疾患や全死因死亡リスクの評価に役立つ?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/12/21

 



住民ベースの試験で、新しい高感度定量法では従来の定量法において検出されなかった心筋トロポニンT(cTnT)値の検出率が高いこと、また検出されたcTnT値が高い人ほど左室肥大や左室収縮機能不全、ひいては全死因死亡リスクが大きいことが示された。米国テキサス大学サウスウエスタン医学センターのJames A. de Lemos氏が、ダラスの住民3,500人超を対象に行った「Dallas Heart Study」の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月8日号で発表した。これまで、cTnT値と構造的心疾患や心血管疾患イベントリスク増大との関連が強いことは知られており、それらのリスク評価に役立つ可能性が示されているが、一般住民ベースで用いられている標準定量法では、cTnT値を検出することがほとんどできず同値の活用が限られている。

cTnT値0.003ng/mL以上検出率、高感度定量法25.0% vs. 標準定量法0.7%




同氏らは、2000~2002年にかけて、30~65歳の3,546人を対象とするコホート試験を開始した。追跡期間の中央値は6.4年(四分位範囲:6.0~6.8年)だった。

被験者は、従来の標準定量法と新しい高感度定量法で、cTnT値を測定された。また、MRIで心臓の構造と機能を調べ、死亡率についても追跡された。

結果、cTnT値が0.003ng/mL以上で有病であると検出された人は、被験者全体で、高感度定量法群は25.0%(95%信頼区間:22.7~27.4)であった。一方、従来の標準定量法群では0.7%(同:0.3~1.1)に留まった。

cTnT値0.003ng/mL以上が検出できた人の有病率は、男性が37.1%と、女性の12.9%に比べ約3倍高かった(p<0.001)。年齢別では、40歳未満は14.0%であったが、60歳以上では57.6%と高かった(p<0.001)。

全死因死亡率、0.014ng/mL以上群は0.003ng/mL未満群の2.8倍




被験者は、cTnT値に基づき5群に階層化され解析された。

左室肥大の有病率は、5群のうち最低群のcTnT値0.003ng/mL未満群では7.5%だったのに対し、最高群の0.014ng/mL以上群では48.1%と大幅に高率だった(p<0.001)。

また、左室収縮機能不全や慢性腎臓病(CKD)の有病率についても、cTnT値が高くなるにつれて増大した(p<0.001)。

追跡期間中の死亡は151人で、そのうち心血管疾患による死亡は62人だった。全死因死亡率とcTnT値の関係についてみたところ、5群のうち最低群のcTnT値0.003ng/mL未満群では1.9%だったのに対し、最高群の0.014ng/mL以上群では28.4%であり、cTnT値の上昇に伴い増大していた(p<0.001)。

この関連は、従来リスク因子やCRP値、CKD、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro BNP)値で補正を行った後も変わらず、cTnT値が最高群の0.014ng/mL以上の人は、最低群の0.003ng/mL未満の人に比べ、全死因死亡に関する補正後ハザード比が2.8(95%信頼区間:1.4~5.2)と高かった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)