「職業上の非行」を犯した医師の学生時代

提供元:ケアネット

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公開日:2010/05/28

 



英国で近年、Dr.ハロルド・シップマン事件やブリストル王立病院小児心臓外科事件など、メディアの関心と人々の懸念を高める医師の犯罪や事件が相次いでいることを背景に、学生時代のリスク因子を見いだすことを目的とした研究が、英国ノッティンガム医科大学Queen’s Medical Centre医学教育部門のJanet Yates氏らにより行われた。BMJ誌2010年5月15日号(オンライン版2010年4月27日号)掲載より。

「cases」59例について照合症例対照研究




Yates氏らは、学生時代の記録とGMC(General Medical Council:全国医学協議会;医師免許の登録管理機構)の記録の、照合症例対照研究を行った。

対象となったのは、1958~1997年の間に、英国の8つの医学校のうちの1つを卒業した59人。いずれも1999~2004年の間に、重大な職業上の非行(professional misconduct)を犯したことがGMCに記録されていた「cases」と認定した医師だった。研究のために卒業者コホートから「cases」1人につき、対照群として4人ずつをシステマティックに選んだ上で(236例)GMCの記録を引き出してきて検討を行った。

主要評価項目は、多変量条件付きロジスティック回帰分析によるオッズ比で「cases」となる可能性が高いと示された、潜在的なリスク因子(入学前・就学中の特性を含む)。データは、「cases」が最初に学んだ医学校から入手した学生時代の記録の写しが用いられた。

「男性」「低階級」「落第を経験」が浮かび上がったが…




解析の結果、「cases」になる可能性が高かったのは、「男性」「出身社会階級が低い」、メディカルコース就学中、特に低学年時に「落第を経験」が、独立したリスク因子として浮かび上がった。

多変量解析の結果のオッズ比は、「男性」であることが9.80(95%信頼区間:2.43~39.44、P=0.001)、「低社会階級」が4.28(1.52~12.09、P=0.006)、「低学年時や臨床コース前に落第を経験」が5.47(2.17~13.79、P<0.001)だった。

ただこの結果についてYates氏は、「結果の捉え方には注意が必要である。もっと大規模な研究を行うことが必要だし、社会的背景の問題は微妙で、いじめや嫌がらせなどについても十分調査する必要がある」としている。