成人の生存率、最高国、最低国はどこか?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/05/27

 



2010年度の15~59歳の成人生存率が最も高い国は男性がアイスランド、女性はキプロスであることが、アメリカWashington大学のJulie Knoll Rajaratnam氏らによる解析で明らかとなった。成人の死亡は世界の医療における最優先課題であり、成人の死因はミレニアム開発目標5(MDG 5、2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1にまで低下させる)およびMDG 6(HIV/エイズの蔓延を2015年までに食い止め、その後減少させる)の重要な構成要素である。しかし、成人の死亡率には政策的な関心がほとんど払われず、医療資源の配分やモニタリングの努力もなされていないという。Lancet誌2010年5月15日号(オンライン版2010年4月30日号)掲載の報告。

1970~2010年の187ヵ国における3,889の調査を基にした解析




研究グループは、15~59歳の年齢層の世界的な死亡率について系統的な解析を行った。1970~2010年の187ヵ国における3,889の調査に関するデータベースを構築した。

データ源としては、健康状態登録データや国勢調査を用い、正確を期すため家庭での死亡に関する調査データを使用した。生存バイアスを修正済みの調査として兄弟姉妹の家族歴のデータも用いた。

ガウス過程回帰モデルを用い、サンプリングおよび非サンプリングエラーを示す不確かさ区間によって各国の15~60歳の男女別の死亡率(45q15と記す)の推定年率を算出した。欠測データによる評価では、これらの解析方法による各国の予測的妥当性は良好なことが示された。

2010年の死亡リスク、アイスランド人男性65人/1,000人、キプロス人女性38人/1,000人




成人の死亡率は、実質的に国ごとおよび調査時期によってばらつきがみられた。

2010年に最も死亡リスクが低かった国は、男性がアイスランド、女性はキプロスであった。アイスランド人男性の45q15は、1,000人当たり65人(不確かさ区間:61~69人)であり、キプロス人女性の45q15は、1,000人当たり38人(同:36~41人)であった。

2010年の死亡リスクが最も高かったのは、男性がスワジランド[45q15:1,000人当たり765人(不確かさ区間:692~845人)]、女性はザンビア[45q15:1,000人当たり606人(同:518~708人)]であった。

サハラ以南のアフリカ諸国(HIVの流行が原因)と、旧ソ連邦およびその関連諸国は、1970~2010年までに成人の死亡率が実質的に上昇した。東南アジアの大部分の地域では成人死亡率が大幅に低下し、南アジアの女性は特に低下傾向が大きかった。

著者は、「成人の死亡を予防するには、子どもの生存率の改善と同様に世界的な医療政策が重要である」と結論し、「成人の死亡率の定期的なモニタリングの重要性をもっと強調すべき」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)