街中へのAED普及、救命率を向上:日本

提供元:ケアネット

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公開日:2010/03/31

 



日本全国に普及したAED、その効果は?
 京都大学保健管理センターの北村哲久氏らは、消防庁のデータを基にした前向き観察研究の結果、素人の手を借りるという公共の場(街中)へのAED普及施策の導入後、院外心停止患者への早期の電気ショック実施が増え、神経障害が最小の1ヵ月生存者の増大に結びついていることが明らかになったと報告した。AED普及効果の検証が行われたのは世界初。NEJM誌2010年3月18日号掲載より。

街中でのAED実施、1.2%から6.2%へ増大




日本では2004年7月から、一般市民によるAED使用が認められている。

本観察研究は、2005年1月1日~2007年12月31日の間に、院外心停止を起こし救急蘇生措置を受けた日本全国の患者を対象に行われた。評価が行われたのは、院外心停止後の生存に及ぼしたAED普及の影響について。主要評価項目は、最小の神経障害を有する1ヵ月生存者の割合とした。

試験期間中、院外心停止を起こした成人は全国で31万2,319例だった。

そのうち1万2,631例は、「心室細動、心原性、居合わせた人によって発見」された例で、うち素人である一般市民による街中に設置されたAEDでの蘇生処置を受けていたのは、462例(3.7%)だった。また街中でのAED実施割合は、AED設置の増加とともに、1.2%から6.2%へと増していた(傾向P<0.001)。

最小の神経障害1ヵ月生存、全体では14.4%、AED実施例では31.6%




主要評価項目とした最小の神経障害を有する1ヵ月生存者の割合は、「心室細動、心原性、居合わせた人によって発見」された全患者間では14.4%、そのうちAEDを受けた患者間では31.6%だった。

早期に除細動処置を受けることは、実施者(居合わせた人、救急隊員)を問わず、良い転帰と関連していた(除細動実施までの時間が1分増すごとのオッズ比:0.91、95%信頼区間:0.89~0.92、P<0.001)。

AED普及の影響については、AED設置数が居住面積(平方km)当たり1台未満から4台以上へと増加したことにつれて、除細動処置を受けるまでの平均時間は3.7分から2.2分へと短縮、年間人口1,000万人当たりの最小神経障害1ヵ月生存者は2.4例から8.9例まで増加していた。

(医療ライター:武藤まき)