乳幼児突然死症候群発生状況の最近の傾向

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/10/30

 



最近の乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生状況について、英国ブリストル大学地域医療学部門のPeter S Blair氏らが調査を行った。SIDSは、1990年代初期の「仰向けで寝かせよう」とのキャンペーン以降、徐々にだが着実に減少し90年代末期には半減したが、一方で最近の報告では、誰かと一緒に就寝していた状況下での発生が目立つようになっていた。Blair氏らは、睡眠時の状況に着目し、SIDS群と、無作為に選んだ対照群、およびハイリスク群(母親が喫煙者・若い・貧しい・多重産)の3群で比較を行った。BMJ誌2009年10月17日号(オンライン版2009年10月13日号)より。

南西部イングランド直近4年間のSIDS発生を住民ベースで検証




調査は、2003年1月~2006年12月の4年間、南西部イングランドで起きた0~2歳児の突然死に関して、住民ベース(490万人、出産184,800件)の症例対照研究にて行われた。SIDS群、対照群、ハイリスク群の各両親に、24時間以内の就寝状況を面談で聞き取り(SIDS群には死亡後に死亡24時間以内の状況を)、SIDS発生との関連因子や、初期のキャンペーン以降に追加的に行われた様々なアドバイス(横向きに寝かせない、喫煙者とは一緒に寝かせない、独りで寝かせない、羽毛布団や枕は使わないなど)は遵守されていたか、新たなリスク因子が出現していないか、ベッドやソファで大人や子どもと寝ていた状況で起きたSIDS発生の特異的な状況に関して検証した。

被験者数は、SIDS群80例、対照群87例、ハイリスク群82例だった。

「飲酒やドラッグ使用の両親とソファで一緒に就寝」が特にリスクに影響




死亡年齢中央値は66週で、この値は10年前に同一地域で行った調査よりも3週間以上短くなっていた。

就寝状況については、誰かと一緒に就寝していたケースがSIDS群では54%だった一方、対照群では20%だった。この差が生じた要因としてBlair氏は、SIDS群では一緒に寝ていた両親が直前に飲酒やドラッグを使用していたこと(SIDS群 vs. 対照群:31% vs. 3%)、ソファで寝ていたこと(同:17% vs. 1%)が顕著だったことが考えられると分析している。

また、SIDS群の約5分の1が発生時に枕を使用しており(同:21% vs. 3%)、約4分の1が上掛けでくるまれていた(同:24% vs. 6%)。

さらに、母親が妊娠中に喫煙していたケースがSIDS群では対照群に比べ、より多かった(同:60% vs. 14%)。早産だったケースは約4分の1(同:26% vs. 5%)、発生時に健康がまずまずか不良の状態だった(同:28% vs. 6%)ことも確認された。

一方、頭部がくるまれていたり、出生後にタバコに曝露されていたり、おしゃぶりを使用していたり、横向きで寝ているケースは減っていたが、SIDS群の一部ではなお、うつぶせで寝ていたケースが見られた(同:29% vs. 10%)。

Blair氏は、「SIDSの多くは、危険な環境下で誰かと一緒に就寝している状況が見られた。リスクに対する影響が大きかったのは、社会経済的な格差状況を問わず、変更の呼びかけや特異的なアドバイスであり、特に、直前に飲酒やドラッグを使用していた両親とのソファでの就寝だった」とまとめている。