うつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/17

 

 電気けいれん療法(ECT)は、うつ病の治療において有効性が高く、確立された治療法である。一方、磁気けいれん療法(MST)は最近開発され、ECTと同等の有効性を示し、かつ副作用が少ないことが示されている。ドイツ・ボン大学のM. Soehle氏らは、うつ病の治療に使用されるECTとMSTについて、全身麻酔における覚醒時間を比較検討した。その結果、同程度の麻酔深度において、けいれん誘発後の覚醒は、ECTよりもMSTのほうが早いことが判明した。British Journal of Anaesthesia誌オンライン版2013年12月3日号の掲載報告。

 本研究は、ECTとMSTにおいて、覚醒時間、左側BIS、BISの左右差などを比較することを目的に行われた前向き観察研究であった。いずれの療法も全身麻酔を必要とし、覚醒状態は、二波長指数(BIS)により定量化可能であった。検討は、ECTを実施した10例、MSTを実施した10例を登録して行われた。プロポフォール麻酔を行い、両側BISセンサーでモニターした。BISが50~60の範囲内でけいれんを誘発し、覚醒までの時間を測定し、けいれん誘発後10分間にわたり両側BISを記録した。

 主な結果は以下のとおり。

・ECT群、MST群とも麻酔深度は同程度であった(ベースライン時の平均BIS値[SD]:各々 94.1[4.1]、95.5[3.0]、けいれん誘発前の同BIS値:各々 52.3[9.6]、55.2[10.3])。
・けいれん誘発後、覚醒時間はMST群(3.0[1.0]分)が、ECT群(6.7[1.3]分)に比べて有意に早かった(p<0.001)。
・MST群の患者は、けいれん誘発2分後において、有意に高いBIS値を示した(69.2[10.1] vs. 50.9[15.9]、p=0.003)。この差はけいれん誘発10分後においても維持されていた(81.5[6.5] vs. 68.0[16.4]、p<0.001)。
・ECT群、MST群ともに、左側BISと右側BIS間の有意差は認められなかった。
・以上のように、同程度の麻酔深度において、MSTはけいれん誘発後の回復という点でECTよりも優れていた。そのことは、けいれん誘発後のBIS値に正確に反映されていた。
・これらを踏まえて著者は、「ECTおよびMST施行例の麻酔深度をモニターするにあたっては、片側のBISモニタリングで十分だと考えられる」とまとめている。

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(ケアネット)