急性心筋梗塞発症後の患者において、ウォートンジェリー由来の間葉系幹細胞(WJ-MSC)の冠動脈内注入により、心不全の発症および心不全による再入院のリスクが有意に低減し、心血管死と心不全/心筋梗塞による再入院の複合エンドポイントが有意に改善した。イラン・Shiraz University of Medical SciencesのArmin Attar氏らが行った第III相試験「PREVENT-TAHA8試験」の結果で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年10月29日号で報告された。なお、本論文はBMJ誌のウェブサイトに掲載後、いくつかの問題点(データの不整合、年齢基準を満たさない参加者の組み入れの懸念、未申告の利益相反の懸念など)が指摘され、これらの解決と掲載後の内容の変更に必要な措置の検討が進められている。
イランの無作為化対照比較優越性試験
PREVENT-TAHA8試験は、イラン・シーラーズ市の3つの病院で実施した単盲検無作為化対照比較優越性試験であり、2021年9月~2022年11月に参加者を募集した(Office of the Vice-Chancellor for Research of Shiraz University of Medical Sciencesの助成を受けた)。
年齢18~65歳、試験登録日前の3~7日以内に初回のST上昇型急性前壁心筋梗塞を発症し、心エコー検査で左室駆出率<40%であり、プライマリPCIが成功した患者396例を対象とした。
これらの参加者を、1対2の割合で介入群(136例、平均年齢57.8[SD 10.7]歳、男性85%)または対照群(260例、59.2[10.9]歳、79%)に無作為に割り付けた。介入群では標準治療に加え、同種WJ-MSCを冠動脈内に注入した。対照群は標準治療のみを受けた。
主要エンドポイントは心不全の発症とした。副次エンドポイントは、心不全による再入院、全死因死亡、心血管死、心筋梗塞による再入院などであった。また、心筋梗塞発症から6ヵ月までの左室駆出率の変化を両群で比較した。
心筋梗塞による再入院、全死因死亡、心血管死には差がない
追跡期間中央値33.2ヵ月の時点における心不全の発症率は、対照群が100人年当たり6.48であったのに対し、介入群は2.77と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.21~0.89、p=0.024)。
また、心不全による再入院(介入群0.92 vs.対照群4.20/100人年、HR:0.22、95%CI:0.06~0.74、p=0.015)、心血管死と心筋梗塞/心不全による再入院の複合エンドポイント(2.80 vs.7.16/100人年、0.39、0.19~0.82、p=0.012)は、いずれも介入群で有意に優れた。
一方、心筋梗塞による再入院(介入群1.23 vs.対照群3.06/100人年、HR:0.40、95%CI:0.14~1.19、p=0.10)、全死因死亡(1.81 vs.1.66/100人年、1.10、0.40~3.02、p=0.86)、心血管死(0.91 vs.1.33/100人年、0.68、0.18~2.57、p=0.57)については、両群間に有意差を認めなかった。
左室駆出率の改善度も優れる
左室駆出率はベースラインから6ヵ月までに、介入群で14.28%(32.97%から47.14%へ)、対照群で8.16%(33.58%から41.66%へ)、それぞれ有意に上昇した。この左室駆出率の改善は、対照群に比べ介入群で有意に良好だった(β=5.88%、95%CI:4.00~7.76、p<0.001)。
入院期間中に、不整脈、過敏反応、再梗塞を含むあらゆる有害事象の監視を厳重に行い、腫瘍形成の監視を中心に長期の追跡調査を実施したが、有害事象の報告はなかった。
著者は、「本試験をこの分野の他の試験と明確に区別する特徴として、(1)左室駆出率などの代替マーカーではなく臨床エンドポイントに焦点を当てたこと、(2)骨髄由来単核細胞ではなくウォートンジェリー由来間葉系幹細胞を使用したことが挙げられる」「この技法は、心筋梗塞後の有用な補助的処置として、心筋梗塞誘発性の心不全の発症を予防し、将来の有害事象のリスク低減に寄与する可能性が示唆される」としている。
(医学ライター 菅野 守)