機械的血栓回収療法は、急性期虚血性脳卒中(AIS)の治療法を一変させ、大血管閉塞(LVO)に伴うAISの標準治療となったが、主要な無作為化臨床試験の対象の多くは近位部閉塞の患者で、より遠位部の閉塞はごく一部(M2セグメントに及ぶものは0.5~14.3%)だという。フランス・Hopital Pitie-SalpetriereのFrederic Clarencon氏らDISCOUNT Investigatorsは、非盲検(評価者盲検)無作為化臨床試験「DISCOUNT試験」において、中・遠位血管閉塞(MDVO)に関連する急性期AIS患者では、薬物療法単独と比較して血栓回収療法+薬物療法は、3ヵ月の時点での良好な臨床アウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア:0~2点)の達成割合を上昇させず、血栓回収療法に伴う出血性合併症の発生頻度が高いことを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年7月22日号で報告された。
フランスの無効中止の無作為化臨床試験
DISCOUNT試験は、フランスの22の脳卒中センターで実施され、2021年11月~2025年4月に参加者を登録した(フランス保健省などの助成を受けた)。
本研究は、データ・安全性監視委員会の勧告に基づき、無効性および血栓回収療法に伴う症候性頭蓋内出血の発生率の増加を理由に、予定されていた中間解析後に中止された。
対象は、年齢18歳以上、米国国立衛生研究所脳卒中尺度(NIHSS)スコア5点以上または重度失語症を伴う症候性血管閉塞を有し、症状発現から8時間以内、またはFLAIR画像で高信号を認めない場合は最終健常確認から24時間以内に入院し、CTまたはMR血管造影でMDVOを確認した患者であった。
被験者244例(年齢中央値75歳[四分位範囲[IQR]:67~81]、男性56%)を、血栓回収療法+薬物療法(123例)または薬物療法単独(121例)を受ける群に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、3ヵ月の時点における、盲検下独立認定評価者による判定に基づく良好な臨床アウトカム(mRSスコア:0~2点)の達成とした。
再疎通率は10%以上改善
血栓回収療法群の123例中100例(81%)が実際に血栓回収療法を受けた。閉塞部位は、遠位中大脳動脈(遠位M2、M3)が75%と最も多く、次いで後大脳動脈(P1、P2、P3)が19%、前大脳動脈(A1、A2、A3)が7%であった。全体で217例(89%)が追跡調査を完了した。
ベースラインのNIHSSスコア中央値は8点(IQR:6~12)、入院時NIHSSスコア≧10点の患者の割合は39%だった。
3ヵ月の時点で、良好な臨床アウトカムを達成した参加者は、血栓回収療法群が116例中72例(62%)、薬物療法単独群は119例中81例(68%)であり、両群間に有意な差を認めなかった(オッズ比:0.73、95%信頼区間[CI]:0.40~1.31、p=0.29、補正後絶対群間差:-6.8%、95%CI:-19.4~5.7)。
閉塞血管の再疎通(48時間後の画像上の動脈閉塞病変[AOL]スコアが2点以上)を達成した参加者は、血栓回収療法群が98例中83例(85%)、薬物療法単独群は97例中71例(73%)であった(群間差:11.5%、95%CI:0.10~23.1、p=0.049)。
また、3ヵ月時に優れた臨床アウトカム(mRSスコア:0~1点)を達成した参加者は、血栓回収療法群が116例中48例(41%)、薬物療法単独群は119例中43例(36%)であった(群間差:5.2%、95%CI:-7.0~17.3、p=0.41)。
くも膜下出血、塞栓の移動が高頻度
有害事象(95%vs.85%)および重篤な有害事象(36%vs.26%)は、血栓回収療法群で頻度が高かった。また、7日以内の症候性頭蓋内出血(11%vs.3%、群間差:8.2%、95%CI:4.3~17.9、p=0.008)、症候性または無症候性くも膜下出血(13%vs.2%、群間差:10.9%、95%CI:4.3~17.9、p<0.001)、塞栓の新たな血管領域への移動(5%vs.1%、群間差:4.3%、95%CI:0.30~9.3、p=0.04)は、いずれも血栓回収療法群で有意に高頻度にみられた。
3ヵ月時の死亡率(6%vs.8%、群間差:-2.3%、95%CI:-8.6~4.1、p=0.49)は両群で同程度だった。
デバイスの最適化が必要な可能性も
著者は、「機械的血栓回収療法には、機能的有益性がなく、出血リスクが高いことから、この病態下における実臨床での使用は支持されない」としている。
また、MDVOにおいて血栓回収療法の有益性を認めなかったことの説明の1つとして、「これらの結果は、静脈血栓溶解療法を含む最善の薬物療法だけでも、すでに高度な有効性に到達していることを示唆する。再疎通率が有意に高かったものの、3ヵ月後の臨床アウトカムの改善にはつながらなかったのは、症候性出血の発生率が高かったことが原因の可能性が高く、これはMDVOでは手技上のリスクが高いことを反映している。現在のデバイスは、LVO用の単なる小型版であるため、MDVO用に最適化する必要があるかもしれない」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)