Heartseedは2026年6月12日、虚血性心疾患または拡張型心筋症による重症心不全を対象とした、他家iPS細胞由来心筋球のカテーテル投与治療(HS-005)の国内第I/II相治験(EMERALD試験)において、1例目への投与に成功したことを発表した。iPS細胞由来の心筋球をカテーテルで投与する臨床試験としては世界初となる。
治験の進捗状況
2026年3月下旬に信州大学医学部附属病院にて、拡張型心筋症による心不全患者1例目への投与が実施された。患者の術後経過はおおむね順調で、すでに退院している。また、独立安全性評価委員会が4週間のデータを評価し、拡張型心筋症群における本治験の継続を承認している。
次世代治療プログラム「HS-005」の特徴
HS-005は、同社の基盤技術で作製された他家iPS細胞由来の心筋細胞の微小組織(心筋球)を使用する治療プログラムである。開胸下で心臓の外側から投与する先行の「HS-001」に対し、HS-005は専用カテーテルシステムを用いて心臓の内側から投与する低侵襲なアプローチを採用しており、身体への負担を軽減できる次世代の治療法として位置付けられている。投与された心筋球は、患者の心筋と結合して再筋肉化することで心収縮力を改善するほか、血管新生因子を分泌して投与部位周辺に新たな血管を形成する作用が期待されている。
1例目の投与を担当した桑原 宏一郎氏(信州大学医学部附属病院循環器内科 教授)は、手技が合併症なく短時間で終了したこと、術後経過が良好であることを報告。また、「増加している心不全患者に対し、身体への負担が少ない新たな治療法の実現に向けた重要な一歩になった」とコメントした。同社代表取締役社長の福田 惠一氏は、カテーテル投与による低侵襲性に言及するとともに、新たに対象疾患に加わった「拡張型心筋症」の患者への投与成功が「より多くの重症心不全患者を救うという当社の目標において極めて重要なマイルストーンである」と述べている。
EMERALD試験(国内第I/II相試験)の概要
本試験は、安全性および有効性の評価を目的とした非盲検、多施設共同の試験である。
・対象疾患:虚血性心疾患または拡張型心筋症による左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)
・予定症例数:14例(各群7例)
・投与量:患者1例当たり1億5,000万個の心筋細胞
・投与デバイス:日本ライフラインと共同開発した専用の投与カテーテルシステム
・主要評価項目:投与後26週目の安全性
・副次的有効性評価項目:52週目の安全性・有効性(局所心筋壁運動評価、心臓の縮小、心機能・マーカー改善など)
現在、国内だけで120万例、世界で6,500万例以上が心不全に罹患しており、心不全パンデミックとも呼ばれる状況にある。重症心不全に対する心臓移植以外の抜本的な治療手段が不足する中、心筋再生医療の新たな選択肢として今後の臨床開発の進展が期待される。
(ケアネット 土井 舞子)