iPS細胞由来の人工心筋移植、心不全治療に有望/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2026/06/10

 

 生物学的心室補助組織(BioVAT)は、同種の人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の心筋細胞と間質細胞から成る人工心筋の移植片であり、心不全および左室駆出率(LVEF)が低下した患者における心筋再筋肉化を目的とする。ドイツ・University Medical Center GottingenのWolfram-Hubertus Zimmermann氏らBioVAT-HF Investigatorsは「BioVAT-HF研究」において、BioVAT移植は3ヵ月の時点で有意な標的壁厚の増加とLVEFの上昇をもたらし、健康状態も有意に改善したと報告した。研究の成果は、NEJM誌2026年5月28日号に掲載された。

ドイツの第I/II相研究

 研究グループは、心不全患者における外科的なBioVAT移植による組織工学的な心臓修復法の安全性と有効性の評価を目的に、ドイツの2施設で非盲検第I/II相研究を実施した(German Center for Cardiovascular ResearchおよびRepaironの助成を受けた)。今回は、事前に規定された3ヵ月時の中間解析の結果を公表した。

 対象は、LVEF 35%以下の症候性心不全で、少なくとも1つの左室セグメントに壁運動の低下または異常を認め、ガイドラインに基づく薬物療法に抵抗性の年齢18~80歳の患者であった。

 被験者は、5、10、20単位の人工心筋から成るBioVAT移植片による治療を受けた。全例に免疫抑制療法を行った。

3例が死亡、移植とは関連なし

 26例(平均年齢59[SD 10]歳、男性23例[88%]、平均罹患期間4.6年[範囲:0.4~16])を登録し、20例がBioVAT移植による治療を受けた。

 移植を受けた全患者で有害事象が発現した。196件の有害事象のうち57件が重篤な有害事象であった。3例(5件)で心室性頻拍を認めたが、いずれもBioVAT移植とは関連がない可能性が高かった。また、心室細動が発生した患者はいなかった。

 研究期間中に3例が死亡し(血管麻痺を伴う全身性炎症反応症候群[SIRS]、新型コロナウイルス感染症、大動脈解離)、いずれもBioVAT移植とは関連がないと判定された。また、1例が心臓移植を受けた。

 4例で免疫抑制療法が中止された。中止理由は、植込み型左室補助人工心臓(LVAD)の装着が2例、腎不全が1例、尿路上皮がんが1例であった。

3つの主要エンドポイントが改善

 BioVATの安全な最大用量(人工心筋20単位)による治療を受けた16例のうち、12例が事前に規定された中間解析のための3ヵ月間の追跡調査を完了した。

 3つの有効性の主要エンドポイントは、以下のとおり3ヵ月の時点でいずれも有意に改善した(事前に規定された両側有意水準p<0.10を満たした場合に有意差ありと判定)。

 標的壁厚の最小二乗平均の値は4.5mm(90%信頼区間[CI]:3.7~5.4、p<0.001)増加し、LVEFは3.9%ポイント(0.9~6.8、p=0.04)上昇した。また、カンザスシティ心筋症質問票の全体の要約スコア(KCCQ-OSS:0~100点、高点数ほど健康状態が良好)は6.7点(1.0~12.5、p=0.06)上昇した。

 著者は、「これらの知見を確定するには、より長期の追跡調査とさらなる臨床評価が必要である」としている。

 また、「概念的には、BioVAT移植による、収縮力が低下した領域への収縮性心筋の追加は、収縮機能と拡張機能の両方をサポートする可能性があり、またラプラスの法則により標的壁厚の増加は壁応力を低下させると考えられる。これらの効果が、左室のリモデリングの逆転に寄与する可能性がある」と考察している。

(医学ライター 菅野 守)