日本の特定健診・特定保健指導では、生活習慣改善の目安として「腹囲2cm・体重2kgの減少(2cm2kg)」が推奨されている。しかし、この目標達成が実際に代謝指標の改善と結びついているか検討した研究は乏しい。そこで、笠原 健矢氏(京都府立医科大学)らの研究グループは、健診コホートデータを用いて2cm2kg目標の妥当性を検討した。その結果、2cm2kg達成は、血糖、血圧、脂質、肝機能といった代謝指標の改善と有意に関連し、実務上の目安としておおむね妥当であることが示唆された。本研究結果は、Obesity誌オンライン版2026年4月4日に掲載された。
研究グループは、2020年にパナソニック社の健康診断を受けた40歳以上のうち、特定保健指導の対象基準に該当する3万240人を解析対象として観察研究を実施した。ベースラインを2020年の健康診断時、評価時点を1年後とし「腹囲が2cm以上減少し、かつ体重が2kg以上減少すること」を「2cm2kg達成」と定義した。2cm2kg達成群と未達成群における代謝指標(血糖、HbA1c、収縮期血圧、拡張期血圧、TG、HDL-C、LDL-C、AST、ALT、γ-GTP)の変化量を比較した。さらに、腹囲・体重の減少量に応じた用量反応関係や、代謝改善を予測する最適カットオフ値についても検討した。
主な結果は以下のとおり。
・対象者のうち、男性の割合は89.6%であった。ベースライン時の平均年齢は52.1歳、平均BMIは27.1kg/m2、平均腹囲は93.3cm。
・2cm2kg達成群は5,243人、未達成群は2万4,997人であった。なお、達成群における実際の平均変化量は腹囲-5.19cm、体重-4.93kgであり「2cm2kg」より大きく減少していた。
・2cm2kg達成群は未達成群と比較して、以下の代謝指標について1年後の変化量が有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。達成群の代謝指標の変化量は以下のとおり。
血糖:-3.77mg/dL
HbA1c:-0.15%
収縮期血圧:-4.71mmHg
拡張期血圧:-3.42mmHg
TG:-40.14mg/dL
HDL-C:+3.19mg/dL
LDL-C:-7.62mg/dL
AST:-6.54U/L
ALT:-13.98U/L
γ-GTP:-18.81U/L
・腹囲および体重について、1cm1kg、2cm2kg、3cm3kgと減少量が大きくなるにつれて、各代謝指標の改善幅が大きくなるという用量反応関係が認められた。血糖変化はそれぞれ-2.85mg/dL、-3.77mg/dL、-5.26mg/dLであった。
・腹囲・体重の減少量が大きいほど、血糖、血圧、TG、HDL-Cの改善達成のオッズも上昇した。体重が3kg超減少した集団では、ほぼ不変の集団と比較して血糖改善(オッズ比[OR]:1.91、95%CI:1.70~2.16)、血圧改善(同:2.24、2.00~2.51)、TG改善(同:2.75、2.46~3.07)、HDL-C改善(同:2.62、2.11~3.25)のオッズが高かった。
・ROC解析の結果、代謝改善を予測する最適なカットオフ値はおおむね腹囲-2.1~-0.7cm、体重-1.7~-0.8kgに収まり、2cm2kgという目標設定を支持する結果であった。ただし、AUCは0.58~0.63であり、予測能としては高くなかった。
本研究結果について著者らは、日本の特定健診・特定保健指導における2cm2kgという目標は代謝改善と関連しており、日本の保健指導において2cm2kgの目標を設定することの妥当性を支持するものであったと結論付けた。一方で、本研究は単一企業の就労者コホートを対象とした観察研究であり男性が占める割合が多いこと、保健指導の因果を示したものではないこと、2cm2kg達成群の実際の減少量が目標値より大きかったことなどの限界も指摘している。
(ケアネット 佐藤 亮)