ノボキュアは2026年4月にメディアラウンドテーブル「進行期肺がん治療の新潮流」を開催した。同イベントでは近畿大学医学部内科学腫瘍内科の林 秀敏氏と同社の代表取締役である小谷 秀仁氏が登壇。2026年3月に保険収載された非小細胞肺がん(NSCLC)の腫瘍治療電場(TTフィールド)「オプチューンルア」について、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との併用効果などを解説した。
TTフィールドの抗腫瘍効果
TTフィールドは、電場をがん治療に応用した新たな治療モダリティである。肺がんに対しては150kHzの交流電場を体内に形成することで、直接および間接作用で抗腫瘍効果を発揮する。
直接作用として明らかになっているのは有糸分裂阻害である。交流電場によって細胞分裂に必要な紡錘体形成が妨げられ、がん細胞がアポトーシスへと誘導される。交流電場によって免疫原性細胞死が誘導されて抗腫瘍免疫が惹起されることで間接作用として抗腫瘍活性が発揮される。この結果、がん免疫療法がより有効に機能する状態が整えられる。
腫瘍細胞と正常細胞では電場の最適周波数が異なること、急速に分裂する腫瘍細胞に対して選択的に作用する特性から、TTフィールドは正常細胞への影響が少ないとされる。
肺がんにおけるTTフィールドへの期待
日本における肺がんの罹患数は全がん種の中で2位、死亡数は最多である。新薬の登場で改善しつつあるが、肺がんの生命予後はいまだに厳しい。とくに2次治療以降の有効な選択肢は少ない。
こうした背景のもと、プラチナベース化学療法で進行した再発・進行NSCLCを対象に、国際多施設共同無作為化試験LUNARが実施された。
同試験の結果、全体集団においてオプチューンルア+標準療法(治験責任医師選択のICIまたはドセタキセル)群の全生存期間(OS)中央値は13.2ヵ月、標準療法群は9.9ヵ月と、統計学的に有意な延長が示され、主要評価項目を達成した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.56〜0.98、p=0.035)。特筆すべきはICIとの併用サブグループである。対照群であるICI単独群のOS中央値10.8ヵ月に対し、オプチューンルア+ICI群では19.0ヵ月を示し、8.2ヵ月の延長が認められた
1)。TTフィールドが腫瘍免疫を活性化することでICIの有効性をさらに高める可能性が示唆される結果となった。
オプチューンルアの対象となるドライバー遺伝子陰性NSCLCにおいても、ICIによる2次治療の効果は限られている。林氏は「ICIをいかに効きやすくするかは、われわれに課せられた重要な使命であり、TTフィールドはその1つの答えになり得る」と期待を語った。
実臨床での活用とサポート体制
オプチューンルアによる治療は在宅で実施する。胸部の前後を挟み4枚のアレイを貼付するという単純なものである。
LUNAR試験における主な有害事象はアレイ貼付部位の皮膚炎(大半がGrade1〜2)であり、保湿やスキンケアなどのシンプルな対応が有効である。
臨床効果の発現は長時間貼付することで、より発揮され、18時間以上の使用が推奨されている。
ノボキュアでは医療者、患者のサポート体制を整えている。MDR(Medical Device Representative)が医療機関向けに情報提供・適正使用推進を担い、DSS(Device Support Specialist)は機器の取り扱いトレーニングなどを担う。在宅療法という特性上、24時間365日のコールセンターでサポートする。アレイには着用時間を記録する温度センサーが内蔵されており、患者の使用データをDSSが担当の医療者に毎月フィードバックする。
治験を行なった林氏は「治療を頑張りたいという患者さんが多い。患者さん自身が治療に関与できる点がモチベーションにもつながっているのではないか」と語った。
TTフィールド療法は従来の薬物治療とは一線を画す新たなモダリティとして、またICIの有効性を底上げする治療戦略として、再発・進行NSCLCにおける新たな潮流となることが期待される。
(ケアネット 細田 雅之)