ベンゾジアゼピン(BZD)は、精神疾患の治療に広く用いられているが、BZD使用開始が自殺行動に及ぼす影響については、これまでの研究で明らかにされていない。米国・インディアナ大学のMarianne G. Chirica氏らは、BZD使用開始前後の自殺行動の時間的ダイナミクスを調査し、患者のサブグループにおけるリスクパターンを検証した。Psychiatry Research誌2026年3月号の報告。
2016~19年の匿名化されたデータベースであるOptum Clinformatics Data Martから得られたBZD使用歴のある患者69万1,517例(年齢範囲:13~64歳)を対象に調査を行った。開始直前(60日前)および薬物治療期間中(開始後1~30日および31~365日)の自殺行動リスクを、開始前3~12ヵ月のベースライン期間と比較した。これにより、すべての時間的に安定した交絡因子が考慮された。自殺行動は、救急外来受診時および入院中の自殺企図および意図的な自傷行為とし、ICD-10-CMで定義した。他の薬剤や心理社会的治療など、測定された時間変動性共変量について統計的に調整した。さらに、異なる患者集団におけるリスクを評価するため、精神医学的診断別に層別化した解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時と比較し、BZD使用開始前の期間における自殺行動リスクは上昇していた(オッズ比[OR]:3.54、95%信頼区間[CI]:3.23~3.89)。
・自殺行動リスクは、BZD使用開始後30日間でさらに増加し(OR:5.05、95%CI:4.41~5.77)、開始後31~365日の間でも高水準を維持した(OR:3.62、95%CI:3.08~4.26)。
・診断別に層別化しても、同様の時間的パターンが認められた。
著者らは「自殺行動リスク上昇は、BZD使用開始前に発生していたことが明らかになった。その後、リスクは短期治療中に最も高かったが、長期治療中でも高水準を維持していた。BZD使用開始の薬理学的効果や開始理由に関連する要因など、その根底にあるメカニズムを理解するためには、さらなる研究が必要である」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)