待機的PCIの実施率、国内で4倍以上の地域格差~J-PCIレジストリ/日本循環器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2026/04/07

 

 日本国内における待機的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施件数には、依然として地域ごとに4倍以上の大きな格差が存在し、人口、面積当たりのPCI実施可能施設の密度が過剰介入に関連している可能性が、J-PCIレジストリを用いた大規模解析より示唆された。齋藤 佑一氏(千葉大学医学部附属病院 循環器内科)が3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 4にて報告した。

 2013年のDPCデータを用いた先行研究では、急性心筋梗塞(AMI)に対する人口10万人当たりのPCI実施件数は全国で比較的均一であった一方、安定冠動脈疾患(安定狭心症)に対する待機的PCIの実施件数には顕著な地域差があることが示されていた。その後、2018年診療報酬改定によるPCIでの虚血評価の義務化の導入や、2019年のISCHEMIA試験の結果報告1)など、PCIを取り巻く環境が変化している。しかし、最新の臨床現場における地域差の実態やその要因は十分に解明されていなかった。

 そこで同氏らは、全国規模のPCIレジストリであるJ-PCIデータを用い、現代の日本におけるPCI実施パターンと地域差の要因を評価。2019年と2023年のPCI症例を対象に、AMIおよび非AMI症例の10万件当たりの実施件数を47都道府県ごとに比較した。さらに、各都道府県のPCI実施施設の密度(人口当たりおよび面積当たり)と、非AMI/AMI実施比率との関連、ならびにPCI施設の地域体制の関連性について検証した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は2019年および2023年に登録された49万4,746件のPCI症例であった。
・AMIに対するPCI実施件数は、2019年、2023年ともに全国で比較的均一であった。
・一方で、非AMIに対する待機的PCIの実施件数には大きな地域差が認められ、2019年で最大4.0倍、2023年では最大4.2倍の格差が存在していた。2019年の実施件数上位の都道府県は滋賀県、京都府、徳島県で、下位は秋田県、新潟県、岩手県であった。2023年も同様の傾向がみられ、上位は滋賀県、京都府、徳島県、下位は秋田県、岩手県、山梨県であった。
・2019年から2023年にかけて、AMIの人口10万人当たりのPCI実施件数は増加傾向にあったが、非AMIのPCI数は減少しており、非AMI/AMI比は有意に低下した(2.99±0.80から2.45±0.69に減少、p<0.001)。
・潜在的なメカニズムとして、人口10万人当たりあるいは面積1,000km2当たりのPCI実施可能施設数(施設密度)が高い地域ほど、非AMI/AMI比が高いという正の相関が認められた。

 本研究の限界として、AMI後の段階的PCIが非AMI群に含まれている可能性があること、観察研究のため因果関係の特定には限界があることを挙げた。

 同氏は、「日本では、緊急を要するAMI治療の提供体制は全国的に比較的均一だが、待機的PCIの実施件数には4倍以上の地域格差が依然として残っている。この格差は、各地域のPCI実施施設の密度に関連している」と指摘。そのうえで、「今後の医療政策は、適切なPCIの実施をさらに促進しつつ、持続可能な心血管治療体制を維持するバランスが求められる」と結論付けた。

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(ケアネット 土井 舞子)