遠隔転移を有する未治療の膵管腺がん患者に対し、NALIRIFOX療法は、標準治療のゲムシタビン+nab-パクリタキセル(Gem+nab-PTX)療法と比較し、全生存期間(OS)を有意に延長することが国際共同第III相試験であるNAPOLI-3試験において示された。一方、NAPOLI-3試験では日本人データが得られていないため、国内適応に向けたブリッジング試験(S095013-169試験)が行われた。すでに昨年、有効性に関する報告がされているが、今回、全生存期間(OS)を含む最終解析結果が報告され、いずれも日本人患者におけるNALIRIFOX療法の有効性と安全性がNAPOLI-3試験の結果と一貫していることが示された。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国立がん研究センター東病院の佐々木 満仁氏が発表した。
・試験デザイン:オープンラベル、単群、多施設共同国内第II相試験(ブリッジング試験)
・対象:切除不能な遠隔転移を有する膵管腺がん患者:41例
・試験群:ナノリポソーム型イリノテカン50mg/m2+オキサリプラチン60mg/m2+レボホリナート200mg/m2+5-FU 2,400mg/m2、病勢進行または許容できない毒性、試験終了まで継続
・評価項目:
[主要評価項目]奏効率(ORR)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DoR)、安全性、薬物動態(PK)、QOLなど
・データカットオフ:2025年7月23日
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中央値12.8ヵ月時点の奏効率(ORR)は41.5%(95%信頼区間[CI]:26.3~57.9)で、NAPOLI-3試験の41.8%と一貫していた。
・OS中央値は9.9ヵ月(95%CI:7.4~12.9)であり、NAPOLI-3試験のNALIRIFOX群(11.1ヵ月、95%CI:10.0~12.1)よりやや劣る結果だった。
・PFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.5~7.4)であった。
・病勢コントロール率(DCR)は75.6%(95%CI:59.7~87.6)であり、NAPOLI-3試験の67.6%(95%CI:62.7~72.3)と同等以上の結果であった。
・DoR中央値は5.6ヵ月(95%CI:1.8~10.9)、奏効までの期間(TTR)中央値は2.84ヵ月であった。
・治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は97.6%(治験薬関連95.1%)であった。Grade3/4のTEAEは78.0%(治験薬関連58.5%)に認められた。
・主なTEAE(全Grade、10%以上)は、食欲不振(61.0%)、下痢(56.1%)、悪心(43.9%)、倦怠感(34.1%)などであった。Grade3/4の主なTEAEは、食欲不振(22.0%)、低アルブミン血症(7.3%)、下痢、悪心、倦怠感、低カリウム血症、体重減少(各4.9%)であった。
・投与量調節について、減量は61%、投与延期は75.6%に認められたが、投与中止に至った例はなかった。
・後続治療を受けた割合は68.3%であり、主な薬剤はゲムシタビン(65.8%)、パクリタキセル(63.4%)であった。
・EORTC QLQ-C30によるQOL評価では、治療開始から48週間にわたりベースラインからの大きな悪化は見られず、良好なQOLが維持されていた。
佐々木氏は「日本のブリッジング試験において、NALIRIFOX療法は日本人患者においても管理可能な安全性プロファイルを示し、有効性についてもNAPOLI-3試験の結果と一貫性が確認された」とした。
発表後の質疑応答では「ORRが非常に良好である一方で、OS中央値は9.9ヵ月と、期待していたほど伸びていないように見受けられる。この結果をどう解釈し、Gem+nab-PTX療法とどう使い分けていくべきか」との質問があった。佐々木氏は「主要評価項目がORRに設定された第II相ブリッジング試験であり、サンプルサイズが41例と限られていたため、早期に治療が不応となった数例がOSの結果に大きく影響した可能性がある。ORRが良好なのはNALIRIFOX療法の大きな強みであり、腫瘍縮小を早期に図る必要がある症例にとっては、有力な選択肢になるだろう。承認後に実臨床でのデータを積み上げ、Gem+nab-PTXとの最適な使い分けを検証していきたい」とした。
(ケアネット 杉崎 真名)