虚血の急性期治療が瘢痕関連VTアブレーション成績に及ぼす影響~TITAN-VT/日本循環器学会 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2026/04/06 虚血性心筋症(ICM)に伴う瘢痕組織関連心室頻拍(VT)に対するカテーテルアブレーションは、急性心筋梗塞(AMI)発症から5時間以内の早期再灌流により良好な結果をもたらすことが、「TITAN-VT研究」より示唆された。西村 卓郎氏(東京科学大学 循環器内科)が3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて報告した。 AMIに対する早期再灌流は、梗塞サイズを縮小し、左室機能の保存や生存率の向上に寄与するため、最新の『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』ではST上昇型心筋梗塞(STEMI)の発症から90分以内に搬送し、primary PCIを実施することが推奨されている1)。しかし昨今、心筋梗塞から数年後に発症する致死性不整脈である“ICMに伴う瘢痕関連VT”が問題視されている。この瘢痕組織の特徴は急性期虚血治療の影響を受けるが、早期再灌流がVTに対するカテーテルアブレーションの結果に及ぼす影響は依然として不明であった。 そこで同氏らは、虚血の急性期管理と虚血性VTアブレーションの長期転帰との関連を評価するため、多施設共同観察コホート研究を実施。2020~24年に45施設で施行されたICMに伴う瘢痕関連VTアブレーション例を後ろ向きに解析し、多電極カテーテルによる左室心内膜のマッピングにて評価された不整脈基質(瘢痕、遅延電位、伝導ブロックなど)およびVTアブレーションの結果と、虚血の背景(AMI vs.慢性完全閉塞[CTO])、再灌流の有無、実施タイミング(Door-to-Balloon time:DTB、Onset-to-Balloon time:OTB)との関連を検証した。なお、VT再発は持続する単形性心室頻拍、抗頻拍ペーシングやショックなどに対する植込み型除細動器による治療実施と定義付けた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象はICM520例(AMI:392例、CTO:116例)ならびにVTアブレーション術581件*で、平均年齢72歳(範囲:64~77)、男性485例(93%)、平均BMI 23(同:21~26)、平均左室駆出率(LVEF)34%(同:26~42)であった。 *複数回の手術経験者は最終手術結果が評価された ・VTアブレーションは、AMIもしくはCTOの診断後中央値16年(8~25年)で実施されていた。 ・使用した3DマッピングシステムはCARTO(60%)、EnSite(35%)、Rhythmia(5%)であった。 ・追跡期間中、全体の76%にVT再発は認められなかった。 ・AMI群の392例(75%)では、OTBが5時間未満(p=0.021)およびDTBが90分未満(p=0.031)の早期再灌流は、遅延または再灌流なしと比較し、より良好な結果と関連していた。 ・不整脈基質としての伝導ブロックはOTBが長い症例ほど高頻度に観察される傾向にあり、再灌流時間が複雑な不整脈基質の形成と関連していることが示唆された。一方で、心表面に対する瘢痕の割合はOTBと強い相関はみられなかった。 ・心筋虚血診断時の側副血管の有無は、VTアブレーションの結果と関連していなかった(p=0.87)。 ・CTO群の116例(23%)では、アブレーション前(ベースライン)の12誘導心電図でQ波を有する患者のほうが、より予後良好な結果と関連していた(p=0.014)。 本研究の限界として、日本人のみを対象としていること、マッピングや手術経験などが標準化されていない、冠動脈の解剖学的構造などは評価していない点を挙げるも、同氏は本研究を振り返り「急性心筋梗塞に対する再灌流遅延例では伝導ブロックが増加することで複雑な不整脈基質が形成されていた。よって、VTアブレーション成績は瘢痕量よりも基質構造(とくに伝導ブロック)に依存する。CTOはAMIと異なる基質を持つ可能性がある」とし、「ベースラインのQ波特性はCTOの既往を有する患者のVTアブレーション結果の簡便な予測マーカーとなる可能性がある」と結んだ。 日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら (ケアネット 土井 舞子) 参考文献・参考サイトはこちら 日本循環器学会ほか. 急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版). 2018. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン. 2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療. 2024. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 虚血性心筋症の心室頻拍、カテーテルアブレーションは有効か/NEJM ジャーナル四天王 (2024/12/03) D2B time短縮で心原性ショック伴うSTEMIの院内死亡率が減少(J-PCIレジストリ)/日本循環器学会 医療一般 日本発エビデンス (2024/03/15) 急性冠症候群ガイドラインの改訂点は?/日本循環器学会 医療一般 (2019/04/17) CareNet AcademiaによるAI生成記事 このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] COVID-19患者の同居家族、エンシトレルビルで発症予防/NEJM(2026/05/22) 肥大型心筋症の長期予後予測、心臓MRIとNT-proBNPが有用/JAMA(2026/05/22) 40歳以上の一般住民における未診断の肝線維症発症頻度は推定1.6%;ヨーロッパ9ヵ国の国際前向きコホート研究(解説:相澤良夫氏)(2026/05/22) MCIからアルツハイマー病への進行率は? スクリーニングツールの精度は?(2026/05/22) 糖尿病患者の下痢・便秘に有効なビフィズス菌の種類は?(2026/05/22) 眼底写真を基にした「網膜年齢」が健康状態を知る手がかりに?(2026/05/22) 複数ドナー由来の細胞製剤追加で臍帯血移植に有望な結果(2026/05/22) 男性の生殖能力低下、一部のがんリスク上昇と関連(2026/05/22) 過剰な塩分摂取は男性の記憶力を低下させる?(2026/05/22) [ あわせて読みたい ] 専門医が総合診療を使って成長する秘訣――50代からの学び直しのコツを教育のプロに聞く【ReGeneral インタビュー】第6回(2026/03/27) ケースで学ぶ輸液オーダー(2026/03/18) 僕はなぜ医者になったのか? 医療行政マンを原点に帰らせたある出来事「総合医育成プログラム」インタビュー【ReGeneral インタビュー】第5回(2026/02/25) 合格直結!テスレクDigest(2025/07/18) キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル【ReGeneral インタビュー】第4回(2026/02/05) 外科医のキャリア終盤に思い出した 何でも診られる医者への憧れ【ReGeneral インタビュー】第3回(2025/12/25) 50代半ばで精神科から一転・総合診療でへき地へ【ReGeneral インタビュー】第2回(2025/12/15) 「総合医育成プログラム」で広がる医師のキャリアと医療機関の未来【ReGeneral インタビュー】第1回(2025/11/24) スマートに進める治験/臨床研究~臨床研究中核病院に学ぶ~(2025/10/28) 第50回日本骨髄腫学会学術集会:独占インタビュー(2025/04/18)