日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、3月18日に定例の記者会見を開催した。会見では、医師会と四病院団体協議会が合同してまとめた「有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書」の概要と日本医師会ドクターサポートセンターのリニューアルが説明された。
初めに松本氏が、「有料職業紹介事業について、利便性が高く、多くの医療機関が利用している一方で、違約金の高額化、需給のミスマッチなどさまざまな問題点がある。現状の課題を整理するとともに、有料職業紹介事業などの適切な運営のあり方や公的な無料職業紹介事業の利用促進を含め、国や業界に対する提言をほかの団体と連携して今回報告書をまとめた」と報告書作成の経緯を説明した。
有料職業紹介から無料職業紹介の活用へ
「有料職業紹介事業の関するワーキンググループ報告書」の概要について、担当常任理事の今村 英仁氏(慈愛会 理事長)が説明した。
2021年度以降、医師・看護師の職業紹介事業に関する手数料は年々増加し、2023年度は約1,061億円となった。東京都病院協会の報告では、医師の平均手数料は335.9万円、看護師は159.8万円となっており、利用する医療機関の大きな負担となっている。
人材紹介サービスを巡る課題やトラブルでは、採用後の早期離職が一番多く、看護・保育・介護職に関しては他分野に比べ、離職率が高い傾向にある。また、手数料率と合わせると、医療など3分野について手数料率は他分野に比べ、高くはないものの離職率が高く、他分野の手数料率は高いが離職率は低い傾向にある。そのほか、早期離職以外にも、求職者のスキルや能力が事前の情報と異なるケースや健康状態に関する情報を伏せて紹介されるケースなどが報告されており、こうしたミスマッチが早期離職の一因となり、高額な手数料に見合わないサービス内容が紹介手数料の高さへの不満、満足度の低さにつながっていると考えられる。こうした問題から本報告書では、四病院団体協議会や日本医師会で看護職、医療職なども対象とした職業紹介事業の実施やすでに病院団体などで実施されている事業を全国展開できるか否かを検討した。
その結果、次のような課題があげられた。1点目は全国版の職業紹介事業とした場合、求職者が都市部の医療機関へ集中し地方の人材流出を加速させる恐れがあること。2点目は就職先として病院が選ばれるとは限らず、病院団体が主体として運営する意義やメリットが必ずしも明確にならないこと。3点目は専門性と経験を持つエージェントの採用育成に費用が発生し、無料低額の事業モデルと両立させることが難しいということ。これらの課題に対しては、高額な紹介手数料への緊急的対応として紹介手数料の上限規制の導入、返戻金制度の義務化と返戻水準の標準化、定着期間に応じた手数料体系の導入が提言される。そのほか、サービスの質向上と法令順守、違反や不適切事例に対する指導監督の強化と情報公開の推進を記している。
求職者に無料職業紹介を活用してもらうために、医療機関が負担する紹介手数料の負担軽減、ハローワークなどの広報強化、医療機関の定着促進に向けた取り組みを記している。とくにハローワークでは、今後、人材確保コーナーの設置や地域医療病院や施設を直接訪問するアウトリーチが本格的に開始される。これにより求人開拓から求人定着まで、継続して支援することが予定されている。同じくインターネットサービスも提供され、とくにスマホ対応や検索機能の利便性向上など、システム改修も予定されている。その一方で、これら取り組みが医療機関や求職医療者に十分知られていない状況であり、医師会、医療団体でも周知に取り組んでいきたいと考えている。
民間の事業者においても医療機関と求職者双方の視点に立ち、丁寧なマッチングを行うと同時に高い公共性、社会性を前提とした運営を行ってもらいたいと考えており、日本医師会やほかの医療団体では、今回のとりまとめを踏まえて、厚生労働大臣に要望書を提出する予定である(なお、本要望書は3月24日に厚生労働大臣に提出された)。
全国との連携で求人情報を拡充へ
「日本医師会ドクターサポートセンターのリニューアルについて」をテーマに担当常任理事の松岡 かおり氏(池田病院 理事長・院長)が説明した。
現在、日本医師会ドクターサポートセンターは、「女性医師支援センター事業」と「医師偏在是正にむけた広域マッチング事業」の2つの事業を柱に行っている。今後は、地域ドクターバンクとの業務連携を進め、全国ネットワークの構築を目指す。具体的には、相互間で求人情報を共有し、医師ドクターバンクの登録者で地域ドクターバンクの求人にコーディネートとマッチングを行うとともに、求職者の希望を前提に情報共有を行う。
また、この4月より日本医師会ドクターサポートセンターとしてホームページの新設を行う。ページ構成としては、組織概要、ワークライフサポート、日本医師会ドクターバンク、地域サポート情報、相談窓口などを掲載する。
今後、日本医師会ドクターバンクとしては、次の6項目を目指す。
・医師・医療機関共に、手数料、成功報酬ともに無料
・コーディネーターと共にすべての医師のドクターライフを考える支援
・医師会だからこそ安心のある公平なマッチング
・地域を知る地域ドクターバンクとの連携
・双方向性のオファー機能
・総合的な診療能力の獲得を目指したリカレント教育との連携
(ケアネット 稲川 進)