2010年代以降、アジア地域における認知症の有病率、発症率、生存率がどのように変化したかを調査した集団ベースの研究は、これまでほとんどなかった。九州大学の小原 知之氏らは、日本のコミュニティにおける37年間の疫学データを用いて、認知症の有病率、発症率、生存率の変化を調査した。Alzheimer's Research & Therapy誌2025年12月29日号の報告。
65歳以上の日本の地域住民を対象に、認知症に関する横断調査を7回実施した(1985、1992、1998、2005、2012、2017、2022年)。また、1988年(803例)、2002年(1,231例)、2012年(1,519例)に、認知症を発症していない65歳以上の住民を対象とした3つのコホートを設定し、それぞれ10年間フォローアップ調査を行った。認知症有病率の傾向は、ロジスティック回帰モデルを用いて検証した。年齢と性別で調整した後、コホート間で認知症発症率と認知症発症後の生存率を比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・認知症の粗有病率は、1985〜2012年にかけて有意な増加が認められた(1985年:6.7%、1992年:5.7%、1998年:7.1%、2005年:12.5%、2012年:17.9%、p for trend<0.01)。その後、2012〜22年にかけて有意な減少が認められた(2017年:15.8%、2022年:12.1%、p for trend<0.01)。
・年齢と性別を調整した後でも、同様の傾向が認められた。
・さらに、年齢および性別で調整した認知症発症率は、1988〜2002年のコホートで有意な増加が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.38〜2.06)。その後、2002〜12年のコホートでは有意な減少が認められた(aHR:0.60、95%CI:0.51〜0.70)。
・認知症発症後の年齢および性別で調整した5年生存率は、1988〜2002年のコホートでは有意な増加が認められた(47.3%→65.2%、p<0.01)が、2002〜12年のコホートでは有意な変化は認められなかった(65.2→58.9%、p=0.42)。
著者らは「2012年以降、日本における認知症の有病率と発症率は、減少傾向が観察された。認知症の発症率の低下は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防とマネジメントの改善、そして健康的な生活習慣行動への意識向上と促進によるものと考えられる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)