生活保護受給者、糖尿病の受診動向と転帰は?/筑波大学ら

提供元:ケアネット

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公開日:2026/01/07

 

 日本において生活保護受給者は医療費が免除されているが、医療費無償化の健康アウトカムに対する効果はどの程度なのか。糖尿病患者を対象に、生活保護受給者と国民健康保険加入者の治療と転帰の違いを調査した研究が行われた。筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野の山岡 巧弥氏らによる本研究は、Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2025年12月4日号に掲載された。

 本研究は後ろ向き観察研究で、2017年4月〜2022年3月につくば市で収集された基本住民台帳・生活保護調査・医療保険請求データを用いた。対象は20〜68歳で2型糖尿病と診断され、糖尿病薬を使用している患者だった。主な評価項目は「年次の眼科検診受診」「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の使用率」「医療費(総額・外来・入院)」「健康アウトカム(低血糖および入院発生率)」であり、多変量回帰モデルにより治療プロセスの差と転帰のリスク比や発生率比を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象となったコホートは、2018〜20年の横断データで1万1,385〜1万1,566例、縦断データで計1万8,655例だった。
・全期間を対象とした解析では、生活保護群は年1回の眼科検診を受ける割合が高かった(調整リスク比:1.15、95%信頼区間[CI]:1.08~1.22)。
・生活保護群では、SGLT2阻害薬の使用割合が高く(1.22、1.13~1.31)、GLP-1受容体作動薬の使用割合はさらに高かった(1.63、1.41~1.90)。
・生活保護群では総医療費(1.16、1.09~1.23)と外来医療費(1.31、1.24~1.38)が高かった反面、入院医療費(0.85、0.77~0.94)は低かった。
・一方で、生活保護群のほうが低血糖の発生率が高かった(2.21、1.38~3.54)。

 研究者らは「本研究では、医療費免除や所得補償がある生活保護受給者は適切な治療を受けやすいことが示された。しかし、低血糖リスクの上昇や健康アウトカムの改善が限定的であることは、単なる医療アクセス改善だけでは健康格差の解消に至らないことを示唆している。これは、病態の複雑さ、生活習慣、教育・自己管理支援の不足、社会的ストレスなど多因子の影響が考えられる。医療費免除のみでは健康アウトカムの改善が十分でないため、低血糖予防や継続的な患者教育・自己管理支援、社会的環境改善の施策など、包括的支援の必要性が高いと考えられる」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)