GLP-1受容体作動薬、高齢者はBMI低下の一方でサルコペニア加速

提供元:ケアネット

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公開日:2025/07/17

 

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、グルコースレベルを効果的に低下させ大幅な体重減少を促進することから、糖尿病や肥満症の治療薬として広く使用されている。一方、サルコペニアは筋肉量と筋力の低下を特徴とする進行性の疾患で、とくに高齢者に多くみられ、2型糖尿病の高齢者では、サルコペニアの有病率が非糖尿病患者に比べて2~3倍高いとされる。こうした背景から、GLP-1RAセマグルチドによる治療を受けた2型糖尿病の高齢者における筋肉量・筋力・筋機能の変化を調査したShijiazhuang People's Hospital(中国・河北)のQingjuan Ren氏らによる研究が、Drug Design, Development and Therapy誌オンライン版2025年7月3日号に掲載された。

 2022年1月~12月にShijiazhuang People's Hospitalでセマグルチド治療を開始した2型糖尿病の高齢患者(65歳以上)を対象とした。年齢、性別、BMI(ベースライン時)、糖尿病罹患期間、併存疾患に基づいて傾向スコアマッチングを行った。対照群はベースライン時の特性は試験群と同等で、GLP-1RAやDPP-4阻害薬の投与を受けていなかった。ベースライン時と6ヵ月ごとに参加者の筋肉量・筋力・筋機能を評価し、24ヵ月追跡した。

 主な結果は以下のとおり。

・セマグルチドによる治療を受けた220例と対照群212例が解析対象となった。参加者のサルコペニアの有病率は27.7%であった。
・両群の特性はベースライン時には有意差を認めなかったが、24ヵ月後にはセマグルチド治療群は対照群と比較して、BMIと筋肉量が有意に減少した。
・セマグルチド治療群では、全例においてBMIが試験期間を通じて継続的に減少した。
・セマグルチド治療群では、骨格筋量指数(SMI)の減少傾向は6ヵ月目から現れ、12ヵ月目から有意な減少となった。握力は男性では当初改善したがその後低下し、女性では低下し続けた。歩行速度は男女ともに有意に低下した。
・多変量解析により、セマグルチドの投与量、ベースライン時のSMI、歩行速度が筋力低下の独立した予測因子であることが同定された。

 研究者らは「セマグルチドの使用は、高齢の2型糖尿病患者において体重を効果的に減少させる一方で、筋肉量・筋力・筋機能を低下させた。この影響は高用量使用において、また元々サルコペニアを有する患者において、とくに顕著だった。セマグルチド投与時は高齢患者個々のリスクとベネフィットを評価し、適切なモニタリングと介入を実施することがきわめて重要である」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)