抗不安薬の副作用と依存リスクを考えると、治療方針の決定においては、その有効性と受容性を詳細に検討する必要がある。スイス・ベルン大学のThomas J. Muller氏らは、不安症治療における抗不安薬の有効性と受容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析(NMA)を実施した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2025年8月11日号の報告。
3つのデータベースを用いて抽出した1980〜2020年の研究を対象に、システマティックレビューおよびNMAを実施した。対象患者は、全般性不安症(GAD)または関連する不安症と診断された成人、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)データが利用可能な成人とし、比較対照群(プラセボ/実薬群)も含めた。主要アウトカムは、有効性(HAM-A合計スコアのベースラインからの変化量の平均差)と受容性(すべての原因による研究中止)とした。
主な結果は以下のとおり。
・100件の研究(2万8,637例)を解析した結果、ほとんどの有効薬剤がプラセボよりも不安軽減に有効であることが示唆された。
・silexanは、NMAに含まれた唯一の植物性医薬品であった。
・有効性が最も高かった薬剤はクロミプラミン、最も低かった薬剤はボルチオキセチンであった。
・受容性に関しては、クロミプラミンは研究中止率が最も高く、クロバザムの中止率が最も低かったことから、有効性と受容性は必ずしも一致しないことが示唆された。
・特筆すべきは、silexanは非常に有効でありながら、プラセボと同等の受容性を示したことである。
・プラセボよりも有害事象が少なかった薬剤は、ジアゼパム、agomelatine、クロバザム、silexanの4剤のみであった。
著者らは「本NMAにより、抗不安薬の有効性と受容性に関する比較が明らかとなった。この結果は、最も包括的な報告であり、不安症成人患者の第1選択治療を導くために利用可能であろう」とまとめている。
(鷹野 敦夫)