ESR1変異のER+/HER2-進行乳がん、vepdegestrantがフルベストラントよりPFS改善(VERITAC-2)/ASCO2025

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/06/06

 

 CDK4/6阻害薬と内分泌療法で病勢が進行したエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者を対象に、vepdegestrantとフルベストラントの有効性と安全性を比較した第III相VERITAC-2試験の結果、ESR1変異を有する患者においてvepdegestrant群の無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究は、2025年5月31日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。

 vepdegestrantは、経口投与可能なタンパク質分解標的キメラ(PROTAC)型のER分解薬である。選択的ER分解薬(SERD)とは異なり、ERを直接分解することで腫瘍増殖の抑制や退縮作用が期待されている。

・試験デザイン:国際共同非盲検ランダム化第III相試験
・対象:CDK4/6阻害薬と内分泌療法による1ラインの前治療歴を有し(追加の内分泌療法は最大1ライン)、手術または放射線治療が適応ではないER+/HER2-の進行または転移を有する乳がん患者 624例
・試験群:vepdegestrant 200mg(1日1回経口投与) 313例
・対照群:フルベストラント500mg(28日を1サイクルとして1サイクル目の1・15日目、2サイクル目以降は1日目に筋肉内投与) 311例
・評価項目:
[主要評価項目]ESR1変異を有する集団および全体集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる臨床的有用率(CBR)、BICRによる奏効率(ORR)、安全性
・層別化因子:ESR1変異、内臓疾患の有無
・データカットオフ:2025年1月31日

 主な結果は以下のとおり。

・年齢中央値はvepdegestrant群60歳(範囲:26~89)、フルベストラント群60歳(28~85)、ESR1変異を有していたのは両群ともに43%、進行・転移がんに対する前治療ライン数は1ラインが82%/76%であった。
・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、ESR1変異集団において、vepdegestrant群5.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.7~7.4)、フルベストラント群2.1ヵ月(95%CI:1.9~3.5)であり、vepdegestrant群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.57[95%CI:0.42~0.77]、p<0.001)。6ヵ月PFS率は、45.2%および22.7%であった。
・全体集団では、vepdegestrant群における統計学的に有意なPFSの改善は認められなかった(3.7ヵ月vs.3.6ヵ月、HR:0.83[95%CI:0.68~1.02]、p=0.07)。
・治験担当医評価のPFSも同様の結果であった。
・OSデータは未成熟であった。
・CBRは、ESR1変異集団ではvepdegestrant群42.1%、フルベストラント群20.2%であった(オッズ比[OR]:2.88[95%CI:1.57~5.39]、p<0.001)。全体集団では34.3%および28.7%であった(OR:1.29[95%CI:0.89~1.91]、p=0.16)。
・ORRは、ESR1変異集団ではvepdegestrant群18.6%、フルベストラント群4.0%であった(OR:5.45[95%CI:1.69~22.73]、p=0.001)。全体集団では10.9%および3.6%であった(OR:3.23[95%CI:1.38~8.71]、p=0.003)。
・試験治療下における有害事象(TEAE)は主にGrade1/2であった。Grade3以上のTEAEはvepdegestrant群23%、フルベストラント群18%に発現した。vepdegestrant群で多く認められたTEAEは、疲労27%(うちGrade3以上:1%)、ALT上昇14%(同:1%)、AST上昇14%(同:1%)、悪心13%(同:0%)などであった。QT延長の発現は、vepdegestrant群10%、フルベストラント群1%であった。TEAEによりvepdegestrantの投与を中止した患者は3%であった(フルベストラントは1%)。

 Hamilton氏は「これらの結果は、vepdegestrantがESR1変異を有するER+/HER2-の進行乳がんに対する有望な治療選択肢となる可能性を支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)