多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げている。その一方で、高齢化や治療の長期化に伴う課題も顕在化している。第50回日本骨髄腫学会学術集会では、多発性骨髄腫診療における地域連携と多職種連携について議論された。
多発性骨髄腫治療の課題を解決する中核病院と診療所の「並走的連携」
兵庫医科大学の吉原 享子氏は、地域の中核病院の立場から多発性骨髄腫治療について述べた。多発性骨髄腫の治療は、中核病院で患者を安定させ、地域連携病院や在宅診療へと移行するのが通常である。長期に渡る治療においては合併症のフォローアップが重要であり、地域医療機関との連携は不可欠である。とくに、CAR-T療法などの高度治療では、紹介元病院との連携を密にして円滑に治療を提供できる体制づくりが求められる。
医療法人星医院の磯田 淳氏は多発性骨髄腫診療の課題として、治療薬の高度化、患者の高齢化、治療期間の長期化をあげた。院内連携で高度化や複雑化に対応し、高齢化や長期化に対応には地域連携で対応する。現在の日本の骨髄腫の病診連携の形としては、中核病院が診療を継続し診療所がサポートする「並走型連携」が現実的である。こうした地域との連携が機能することで、入院中の高度なレジメンが患者の予後改善に効果的に結びつくことになる。
多発性骨髄腫患者をチームで支える看護師、薬剤師
渋川医療センターの本多 昌子氏は看護師の立場から病院での取り組みを紹介。院内における対面カンファレンスの重要性を指摘した。また、患者にとって最も身近な存在である看護師は、収集した情報をカンファレンスで提供し、チームのハブとしての役割を担うべきだと述べた。
国立国際医療研究センターの小室 雅人氏は、多発性骨髄腫治療の複雑化に伴い、薬剤師の役割が重要になっていると指摘。患者・家族への服薬指導だけでなく、医師に対する処方提案やポリファーマシー対策の提言も薬剤師の重要な業務である。とくに高齢患者においては、副作用により治療が継続不能になる可能性があるため薬剤師の役割は大きいという。
かかりつけ医と骨髄腫主治医の連携を
日本骨髄腫患者の会の上甲 恭子氏は、2022年と25年に行ったアンケートの結果も交え、多発性骨髄腫患者が抱えるさまざまな問題について説明。医師との意識のギャップ、かかりつけ医と骨髄腫主治医の連携の重要性を指摘した。
アンケートの結果から、治療については骨髄腫主治医への依存度が高いこと、かかりつけ医と骨髄腫の主治医の連携によって患者のウェルビーイングが向上すると示唆された。
(ケアネット 細田 雅之)