術後ctDNA陽性StageIII結腸がんへの治療強化、RFS改善は得られず(DYNAMIC-III)/ASCO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/04

 

 術後にctDNAが検出されると再発リスクが高いことは多くの研究で報告されている。DYNAMIC-IIIはStageIIIの結腸がん患者を対象に、術後のctDNA検出に基づいた補助化学療法と標準治療を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Peter MacCallum Cancer Centre(オーストラリア)のJeanne Tie氏が、本試験の1次解析結果を報告した。ctDNA陽性であれば治療強化、陰性であれば減弱し、それぞれを標準治療と比較する試験デザインで、今回はctDNA陽性例の解析が発表された。

・試験デザイン:多施設共同ランダム化第II/III相試験
・対象:切除可能なステージIIIの結腸がん患者
・試験群:治療強化ストラテジー(化学療法なし→5FU/カペシタビン、5FU/カペシタビン→6ヵ月のオキサリプラチンベースの2剤療法、3ヵ月の2剤療法→6ヵ月の2剤療法または3ヵ月内のFOLFOXIRI、6ヵ月の2剤療法→3ヵ月内のFOLFOXIRIをリスクに応じて選択:ctDNA情報提供群)129例
・対照群:ctDNA検査の結果は非表示、医師選択による治療(標準療法群)130例
・評価項目:
[主要評価項目]2年無再発生存期間(RFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・961例の適格症例において259例(27%)がctDNA陽性で、ctDNA情報群と標準治療群に1対1で割り付けられた。このうち高リスク(T4、N2)はctDNA情報群77例(60%)、標準治療群69例(53%)で、観察期間中央値は42.2ヵ月だった。
・129例のctDNA情報提供群において、115例(89%)が治療強化ストラテジーを受け、うち65例(50%)が3ヵ月内のFOLFOXIRI、56例(44%)が6ヵ月の2剤療法を受けた。130例の標準治療群では14例(11%)がフルオロピリミジン単剤、112例(86%)がオキサリプラチン併用2剤療法であった。
・主要評価項目である2年RFSはctDNA情報提供群で52%(90%信頼区間[CI]:44~59)、標準治療群で61%(90%CI:54~68%)であった。HRは1.11(90%CI:0.83~1.48)であり、ctDNA情報提供群での優越性は認められなかった。
・ctDNA情報提供群でFOLFOXIRIとFOLFOX/CAPOXを受けた症例の3年RFSは同等であった(47%対51%、HR:1.09)。再発リスクはctDNA量とともに増加し、腫瘍由来のctDNA量を四分位したときの3年RFSは、それぞれ78%、63%、36%、22%であった。
・治療関連入院率は、治療強化群と標準治療群で類似していた(オッズ比:1.21)。補助化学療法後のctDNA解析は進行中となっている。

 Tie氏は「本試験はStageIII結腸がんを対象に、ctDNA情報に基づく戦略を検討した最初のランダム化研究だった。検出可能なctDNAの予後意義を確認し、ctDNA負荷量が増加するにつれて再発リスクが増加するという新たな知見を得た。しかし、ctDNAに基づく治療強化はRFSを改善しなかった。ctDNA陽性患者における今後の研究では、ほかの治療強化戦略を検証すべきだ」とした。

 現地で聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「ctDNAによって術後補助療法の強度を変える、というのは魅力的なストラテジーだが、今回の結果はネガティブだった。同様のアプローチの試験は米国・欧州などにおいても進行中であり、中でも日本でCIRCULATE-Japanが行うALTAIR試験(ctDNA陽性の治癒切除後の大腸がん患者を対象に、FTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験)の結果に注目している」とコメントした。

(ケアネット 杉崎 真名)

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