日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、5月28日に定例の記者会見を開催した。会見では、先の「3党合意による『11万床削減』の報道について松本氏がコメントし、「病床の削減は、方法論を間違えると、地域住民、患者やその家族、そして、医療現場で懸命に命や健康を守っている医療従事者、さらには医療に関わる業種の皆さんに、大変な不安や混乱を与えかねない」と強調し、「今後、関係者の理解と納得が得られる政策となることに期待を寄せる」と語った。
また、常任理事の城守 国斗氏(医療法人三幸会 理事長)が、6月4日に開催される「第19回 国民医療推進協議会総会」の概要を説明した。本協議会は平成16年10月、「国民の健康の増進と福祉の向上を図るため、医療・介護・保健および福祉行政の拡充強化を目指し、積極的に諸活動を推進すること」を目的に、日本医師会が各医療関係団体などに呼びかけ、発足。これまでの活動としては、国民皆保険制度を守るための活動や禁煙推進運動などを行っている。現在42の団体で構成されている。
職場の熱中症対策では事業者に予防義務も明記
「今年の夏の熱中症対策について」をテーマに常任理事の松岡 かおり氏(池田病院 理事長・院長)が、6月から改正労働安全衛生規則の施行により職場における熱中症対策が義務化されることを含めて、熱中症対策について解説した。
熱中症による救急搬送件数は、2024年(9万7,578件)は10年前の2014年(4万48件)の2倍以上となっており、うち7歳未満の子供は約1.7倍、65歳以上の高齢者は約3倍に増加している。さらに、高齢者の熱中症の発生場所は、住宅など居住場所が全体の約半数を占めていると説明した。
熱中症対策では、とくに高齢者は喉の渇きを感じにくく、体内の水分が不足しがちであり、暑さに対する体の調節機能も低下していることから、注意が必要であり、「エアコンなどを上手に使用し、こまめな水分補給などを心がけるように」と語った。
一方、子供は体に蓄えておける水分量が少なく、容易に水分不足に陥りやすいうえ、自分から危険を感知・回避する能力が乏しいことから、大人が注意して観察し、定期的な休息やこまめな水分補給を促すことが重要だと指摘するとともに、夏の不規則な生活や睡眠不足は高温環境下での熱中症を加速させるとして、規則正しい生活と十分な睡眠を取るようにと述べた。
また、近年、職場における熱中症の死傷者数が増加傾向にあることを踏まえ、労働安全衛生規則の一部改正により、本年6月1日より職場における熱中症対策が義務化されたことに触れ、説明した。
事業者は「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行う際、
(1)早期に発見するための体制整備
(2)熱中症の重篤化を防止するための措置の実施手順の作成
(3)これらの体制や実施手順について関係作業者への周知
が義務付けられるとした。
さらに日本医師会では、こうした状況を踏まえ、職場における熱中症対策に焦点を当て、日本医師会公式チャンネルで詳しい解説を副会長の釜萢 敏氏が行っているので、参考にしてもらい、ぜひ活用してほしいと紹介し、会見を終えた。
(ケアネット 稲川 進)