HER2+進行乳がん1次治療のT-DXd+ペルツズマブ、進行/死亡リスクを44%減(DESTINY-Breast09)/ASCO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/04

 

 HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブ併用療法の有用性を評価した第III相DESTINY-Breast09試験の中間解析の結果、現在の標準治療よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 DESTINY-Breast09試験は、HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、T-DXd単独またはT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性と安全性を、標準治療であるタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)と比較評価することを目的として実施された。対象は、HER2+(IHC 3+またはISH+)の進行または転移を有する乳がんと診断され、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない、または内分泌療法歴が1ラインのみの患者であった。術前または術後補助療法として化学療法またはHER2標的療法の治療歴があっても、進行・転移までの期間が6ヵ月を超える場合は対象となった。

 主要評価項目はRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、主要副次評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は治験責任医師によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、2次治療開始後のPFS(PFS2)、安全性であった。

 今回は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法vs.THP療法の中間解析結果が報告された(データカットオフ:2025年2月26日)。

 主な結果は以下のとおり。

・T-DXd+ペルツズマブ群は383例、THP群は387例であった。年齢中央値は、54歳(範囲:27~85)/54歳(同:20~81)、アジア人が49.1%/49.4%、IHC 3+が83.0%/81.4%、HR+が54.0%/54.0%、de novoが52.2%/51.7%、PIK3CA変異陽性が30.3%/31.3%、脳転移ありが6.5%/5.7%、術前または術後補助療法歴ありが43.3%/43.7%であった。
・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~NC)、THP群26.9ヵ月(同:21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56[95%CI:0.44~0.71]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は70.1%および52.1%であった。
・治験責任医師によるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%CI:36.5~NC)、THP群20.7ヵ月(同:17.3~23.5)であった(HR:0.49[95%CI:0.39~0.61]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は68.6%および43.7%であった。
・PFSのベネフィットはサブグループ間で一貫していた。
・BICRによるORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(同:74.1~82.5)であった。完全奏効率は、15.1%および8.5%であった。
・BICRによるDOR中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)、THP群26.4ヵ月(同:22.3~NC)であった。
・OSデータおよびPFS2データは未成熟であったが、T-DXd+ペルツズマブ群で良好な傾向がみられた。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群54.9%、THP群52.4%に発現し、重篤な試験治療下における有害事象は27.0%および25.1%に発現した。間質性肺疾患/肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群46例(12.1%、Grade5が2例[0.5%])およびTHP群4例(1.0%、すべてGrade1/2)に発現した。T-DXd+ペルツズマブ群の安全性は既知のプロファイルと一致していた。

 これらの結果より、Tolaney氏は「DESTINY-Breast09試験において、T-DXd+ペルツズマブ併用療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善をもたらした。HER2+進行乳がん患者の新たな第1選択の標準治療となる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)