高齢者における睡眠障害を伴ううつ病に対するさまざまな薬物治療の有効性と安全性を比較するため、中国・北京大学のJun Wang氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌2025年5月号の報告。
主要な国際データベース(Medline、Cochrane Library、Scopus、Embase、WHO国際臨床試験登録プラットフォーム、ClinicalTrialsなど)より、事前に設定したワードを用いて、検索した。薬物治療またはプラセボ群と比較したランダム化比較試験(RCT)を対象に含めた。ネットワークメタ解析におけるエフェクトサイズの推定には、標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を用いた。データ解析には、頻度主義アプローチを用いた。安全性評価には、治療中に発現した有害事象および重篤な有害事象を含めた。
主な内容は以下のとおり。
・検索された文献8,673件のうち、12件のRCTが基準を満たした(3,070例)。
・すべての薬物治療介入は、不眠症重症度指数(ISI)およびうつ病スコアの低下に有効的であった。
・セルトラリンは、高齢のうつ病および不眠症患者におけるISIおよびハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)の改善において、最も効果的な介入である可能性が高かった。
【ISI】SMD:−2.17、95%CI:−2.60~−1.75
【HAM-D】SMD:−3.10、95%CI:−3.60~−2.61
・安全性評価では、エスシタロプラム、zuranoloneで報告された患者数において、ゾルピデム、seltorexant、エスゾピクロンは、プラセボまたは他の治療薬と比較し、重篤な有害事象リスクが高かった。
著者らは「セルトラリンは、高齢者の睡眠障害を伴ううつ病において最適な治療選択肢である可能性が最も高かった。エスシタロプラム、zuranolone、seltorexantでは、ISI改善において、有意な効果が認められなかった。これらの結果はエビデンスに基づいた臨床実践に役立つはずである」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)