抗精神病薬投与が脳構造変化に及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/27

 

 精神疾患の自然経過に関連する潜在的な交絡因子を考慮せずに、抗精神病薬がMRI脳構造指標に及ぼす影響を明らかにすることは困難である。しかしながら、薬物治療中の患者を対象とした横断研究および縦断研究の結果を解明し、最終的な抗精神病薬の治療効果に及ぼす生物学的メカニズムの理解を深めるためには、これらの影響をより深く理解する必要がある。英国・King's College LondonのPierluigi Selvaggi氏らは、疾患の影響がない場合に、抗精神病薬投与がMRI脳構造指標の変化と関連しているかを明らかにするため、本検討を行った。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年5月7日号の報告。

 健康ボランティアを対象としたランダム化二重盲検カウンターバランス順序クロスオーバープラセボ対照試験を実施した。抗精神病薬を1週間投与後にプラセボを投与する群またはその逆の投与を行う群にランダムに割り付けた(24例)。抗精神病薬には、Arm1ではamisulpride(400mg/日)、Arm2ではアリピプラゾール(10mg/日)を用いた。

 主な内容は以下のとおり。

・amisulpride群は、プラセボ群と比較し、左被殻および右尾状核のMRI容積推定値が増加した。
・アリピプラゾール群は、プラセボ群と比較し、右被殻のMRI容積推定値が増加した。
・皮質容積推定値、皮質厚、皮質表面積、T1緩和時間では、影響は認められなかった。
・線条体の変化は、投薬中止後数週間以内で回復した。

 著者らは「2種類の異なる抗精神病薬のいずれかを短期間投与すると、T1強調MRIで測定された線条体容積が一時的に増加するが、投与中止後、皮質の変化を伴わずに急速に正常化することが明らかとなった。線条体のMRI容積の違いは、少なくとも部分的に薬理学的作用に影響を及ぼす可能性を示唆している」としている。

(鷹野 敦夫)