近年、アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体の承認が加速している。しかし、抗アミロイド抗体の臨床的意義やリスク/ベネフィットプロファイルは、依然として明らかになっていない。他の治療法ではなく、抗アミロイド抗体を選択する根拠を確立するためにも、アルツハイマー病の異質性および抗アミロイド抗体の長期臨床データの不足は、課題である。スペイン・University of Castilla-La ManchaのDanko Jeremic氏らは、抗アミロイド抗体の有効性および安全性を評価し、比較するため、従来のペアワイズメタ解析ならびに第II相および第III相臨床試験の結果を用いたベイジアンネットワークメタ解析を実施した。また、本研究の目的を達成するため、研究者や臨床医が疾患進行や有害事象のベースラインリスクに関するさまざまな事前選択や仮定を組み込み、これらの治療法の相対的および絶対的なリスク/ベネフィットをリアルタイムに評価できる無料のWebアプリケーションAlzMeta.app 2.0を開発した。Journal of Medical Internet Research誌2025年4月7日号の報告。
PRISMA-NMAおよびGRADEガイドラインに従い、エビデンスの報告および確実性を評価した。2024年9月30日までに公表された臨床試験報告書は、PubMed、Google Scholar、臨床試験データベース(ClinicalTrials.govを含む)より検索した。孤発性アルツハイマー病患者数が20例未満、修正Jadadスコアが3未満の研究は分析から除外した。バイアスリスクの評価には、RoB-2ツールを用いた。相対リスク/ベネフィットは、リスク比および標準化平均差を算出し、すべてのアウトカムにおける信頼区間、信用区間、予測区間を算出した。有意な結果を得るため、介入効果は頻度主義およびベイズ主義の枠組みで順位付けし、その臨床的意義は、1,000人当たりの絶対リスク、広範な対照群に対する治療必要数(NNT)により評価した。
主な結果は以下のとおり。
・2万1,236例を対象とした7つの治療法(バイアスリスクが低い、または多少の懸念のある研究26件)のうち、ドナネマブは、認知機能および機能的指標において最も高い評価を受けた。この評価は、aducanumabおよびレカネマブの約2倍の効果を示し、認知機能および機能の全般的な臨床的認知症尺度(CDR)ボックス合計スコアにおいて他の治療法よりも有意に有益であることが示唆された(NNT=10、95%信頼区間[CI]:8〜16)。
・脳浮腫および微小出血については、ドナネマブ(NNT=8、95%CI:5~16)、aducanumab(NNT=10、95%CI: 6~17)、レカネマブ(NNT=14、95%CI:7~31)において臨床的に関連する脳浮腫リスクが認められ、ベネフィットを上回る可能性も示され、とくに注意が必要であることが明らかとなった。
著者らは「抗アミロイド抗体の中では、ドナネマブが最も有効であり、安全性プロファイルはaducanumabやレカネマブと同様であることが示された。しかし、より安全性の高い治療選択肢の必要性も浮き彫りとなった。これは、対象試験において頻繁な脳浮腫および微小出血による盲検化の解除ならびにCOVID-19パンデミックの影響により、潜在的なバイアスが生じている可能性がある」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)