頻回の献血によるクローン性造血への影響は?/Blood

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/19

 

 頻回の献血が健康や造血幹細胞に及ぼす影響についてはほとんど解明されていない。今回、ドイツ赤十字献血センターのDarja Karpova氏らが100回超の献血者と10回未満の献血者を調べた結果、前がん病変であるクローン性造血の発生率には差はなかったが、DNMT3Aに明らかに異なる変異パターンがみられることがわかった。Blood誌オンライン版2025年3月11日号に掲載。

 本研究では、100回超の献血歴を有する高齢男性の頻回献血者217人と10回未満の散発的献血者212人のデータを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・頻回献血者は散発的献血者と比較して、クローン性造血の全発生率に有意差は認められなかった。
・クローン性造血で最も影響を受ける遺伝子であるDNMT3Aの変異を詳細に分析したところ、頻回献血者のコホートと年齢・性別をマッチさせた対照ドナーのコホートとの間に明らかに異なる変異パターンがみられた。
・CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)で編集したヒト造血幹細胞を用いて調べた頻回献血者に濃縮されたDNMT3A変異体の機能解析では、エリスロポエチン(失血に反応して増加する)で刺激すると競合的に伸長する可能性が示された。対照的に、白血病を誘発するDNMT3A R882変異を持つクローンはインターフェロンγ曝露により増加した。
・プライマリーサンプルの変異と免疫表現型の同時プロファイリングを単一細胞レベルで行った結果、がんになる可能性の高いR882変異を持つ造血幹細胞では骨髄バイアスが見られたが、エリスロポエチンに反応するDNMT3A変異を持つ造血幹細胞では有意な系統バイアスは観察されなかった。後者は、CRISPRで編集したヒト造血幹細胞異種移植片に持続的な赤血球産生ストレスを加えると、選択的赤血球分化を示した。

 われわれのデータは、体性幹細胞レベルで微妙に進行するダーウィンの進化を示しており、エリスロポエチンが特定のDNMT3A変異を持つ造血幹細胞に有利な新たな環境因子であることが特定された。

(ケアネット 金沢 浩子)