強迫症併存の双極症I型に対するLAI抗精神病薬補助療法の有用性

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/20

 

 双極症と強迫症は、併存することが多く、このような場合の治療には、大きな課題がある。双極症における強迫症の併存は、自殺リスクの増加や機能障害などの重篤な臨床的特徴と関連している。強迫症には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が有効であるが、双極症の躁症状への転換リスクを増加させる可能性がある。アリピプラゾール月1回製剤やパリペリドン月1回製剤などの長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、双極症治療における有病な代替治療として期待されるが、強迫症併存の双極症に対する有効性および安全性は、十分に研究されていない。イタリア・Asl Napoli 1 CentroのVassilis Martiadis氏らは、強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の有効性および忍容性を評価するため、本研究を実施した。Journal of Clinical Medicine誌2025年2月2日号の報告。

 対象は、強迫症併存の双極症患者27例。気分安定薬(リチウムまたはバルプロ酸)と併用してLAI抗精神病薬による治療を行った。臨床的および精神病理学的評価は、ベースラインおよび定期的に実施し、評価尺度にはYale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いた。安全性および忍容性の評価には、UKU副作用評価尺度を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・LAI抗精神病薬治療は、躁病エピソードを引き起こすことなく、強迫症の症状や気分安定に対する有意な改善が認められた。
・アリピプラゾールLAIは、パリペリドンLAIと比較し、体重増加に対する忍容性が良好であった。
・アリピプラゾールLAIとパリペリドンLAIとの間に、全体的な有効性の有意な差は認められなかった。

 著者らは「強迫症併存の双極症に対するLAI抗精神病薬の補助療法は、効果的かつ忍容性の良好な治療選択肢である可能性が示唆された。このような患者に対する治療戦略を改善するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)