適度なワイン摂取は、心血管疾患(CVD)の発症リスクを低下させると報告されているが、ワイン摂取量は自己申告に基づくものであり、正確な評価は難しい。そこで、スペイン・バルセロナ大学のInes Dominguez-Lopez氏らの研究グループは、ワイン摂取量の指標としての尿中酒石酸濃度の有用性を検討し、また尿中酒石酸濃度とCVDイベント発生リスクとの関係を検討した。その結果、尿中酒石酸濃度とCVDイベント発生リスクには、有意な関係が認められ、ワイン摂取量よりも尿中酒石酸濃度が有用な指標となる可能性が示された。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2024年12月18日号で報告された。
本研究は、心血管リスクの高い集団を対照として、地中海食とCVDイベントとの関連を検討した無作為化比較試験「PREDIMED試験」1)のデータを用いて実施した。対象は、PREDIMED試験の対象となった7,447例のうち、試験期間中にCVDイベント(心不全、心筋梗塞、脳卒中、心血管死)が発生した685例と、発生していない547例であった。自己申告によるワイン摂取量、ベースライン時および1年後の尿中酒石酸濃度を用いて、CVDリスクとの関係を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・対象の平均年齢は68歳で、女性は657例(53.3%)であった。
・ワイン摂取量と尿中酒石酸濃度には正の相関があった(r=0.46、95%信頼区間[CI]:0.41~0.50)。
・ベースライン時の尿中酒石酸濃度が3~12μg/mL、12~35μg/mLの集団ではCVDイベント発生リスクが低かった。尿中酒石酸濃度別のCVDイベントのハザード比(HR)、95%CI、p値は以下のとおりであった。
<1μg/mL(ワイングラス1杯/月未満に相当):1(対照)
1~3μg/mL(同1~3杯/月):0.89、0.56~1.42、p=0.637
3~12μg/mL(同3~12杯/月):0.62、0.38~1.00、p=0.050
12~35μg/mL(同12~35杯/月):0.50、0.27~0.95、p=0.035
>35μg/mL(同1.25杯/日超):0.89、0.48~1.66、p=0.723
・CVDイベント別の解析では、尿中酒石酸濃度の増加に伴って心筋梗塞のリスクが低下した(尿中酒石酸濃度1SD増加当たりのHR:0.70、95%CI:0.50~0.97)。
・ワイン摂取量別の解析では、CVDイベント発生リスクの低下はみられなかった。
本研究結果について、著者らは「少量~中等量のワイン摂取量に相当する尿中酒石酸濃度は、CVDイベント発生リスクの低下に関連した。尿中酒石酸濃度がワイン摂取量の客観的なバイオマーカーとなり、CVDイベント発生リスクの評価に有用である可能性が示された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)