風邪の予防・症状改善に亜鉛は有用か?~コクランレビュー

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/27

 

 風邪症候群の予防や症状持続期間の短縮に関して、確立された方法はいまだ存在しない。しかし、この目的に亜鉛が用いられることがある。そこで、システマティック・レビューおよびメタ解析により、風邪症候群の予防や症状改善に関する亜鉛の効果が検討された。その結果、亜鉛には風邪症候群の予防効果はないことが示唆されたが、症状持続期間を短縮する可能性が示された。Maryland University of Integrative HealthのDaryl Nault氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2024年5月9日号で報告した。

 研究チームは、風邪症候群や上気道感染の予防または症状改善に関する亜鉛の効果をプラセボと比較した無作為化比較試験を検索した。検索には、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、LILACSを用い、2023年5月22日までに登録された試験を抽出した。また、Web of Science Core Collectionや臨床試験登録システムへ2023年6月14日までに登録された試験も検索した。エビデンスの確実性はGRADEを用いて評価した。また、有害事象についても調べた。

 システマティック・レビューの結果、34試験(予防:15試験、治療:19試験)に参加した8,526例が対象となった。22試験が成人を対象としたもので、12試験が小児を対象としたものであった。

 予防目的、治療目的での亜鉛の使用に関する主な結果は以下のとおり。

【予防目的での使用】
・風邪症候群の発症リスクは、プラセボと比較してほとんどまたはまったく低下しない可能性がある(リスク比[RR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.01、I2=20%、9試験[1,449例]、エビデンスの確実性:低い)。
・風邪症候群を発症した場合、症状持続期間はプラセボと比較してほとんどまたはまったく短縮しない可能性がある(平均群間差:-0.63日、95%CI:-1.29~0.04、I2=77%、3試験[740例]、エビデンスの確実性:中程度)。
・有害事象の発現リスクの違いは不明である(RR:1.11、95%CI:0.84~1.47、I2=0%、7試験[1,517例]、エビデンスの確実性:非常に低い)。
・重篤な有害事象の発現リスクの違いも不明である(RR:1.67、95%CI:0.78~3.57、I2=0%、3試験[1,563例]、エビデンスの確実性:低い)。

【治療目的での使用】
・風邪症候群の症状持続期間は、プラセボと比較して短縮する可能性がある(平均群間差:-2.37日、95%CI:-4.21~-0.53、I2=97%、8試験[972例]、エビデンスの確実性:低い)。
・非重篤な有害事象の発現リスクは、プラセボと比較して増加する可能性がある(RR:1.34、95%CI:1.15~1.55、I2=44%、16試験[2,084例]、エビデンスの確実性:中程度)。
・重篤な有害事象に関する報告はなかった。

 著者らは、本システマティック・レビューおよびメタ解析において、エビデンスの確実性が低いまたは非常に低い結果が多かったという限界を指摘しつつ、「亜鉛は風邪症候群の予防には、ほとんどまたはまったく効果がないことが示唆される。一方、治療に用いる場合は、非重篤な有害事象を増加させる可能性はあるが、風邪の罹病期間を短縮する可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)