オミクロン感染した高齢者、再感染リスクが高い!?

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/29

 

 高齢者は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種率が高いにもかかわらず、SARS-CoV-2オミクロン株への感染および重症化のリスクが高く、とくに介護施設などで共同生活をしている高齢者はそのリスクが高いことが知られている。また、高齢者において、SARS-CoV-2オミクロン株感染後のハイブリッド免疫(ワクチン接種と感染をいずれも経験した人の免疫)の再感染に対する予防効果は明らかになっていない。そこで、カナダ・McMaster UniversityのJessica A. Breznik氏らの研究グループは、介護施設や老人ホームに入所しているワクチン接種済みの高齢者を対象に、SARS-CoV-2感染リスクに関連する因子を検討した。その結果、SARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する高齢者は再感染リスクが低下せず、むしろ高かったことが明らかになった。本研究結果は、eClinicalMedicine誌オンライン版2023年8月21日号で報告された。

 カナダ・オンタリオ州の介護施設または老人ホームに入所している高齢者で、ワクチン接種を4回受けている750例を対象に、2022年7月1日~9月13日の期間におけるSARS-CoV-2感染率を後ろ向きに調査し、感染リスクに関連する因子を検討した。また、観察期間前3ヵ月(2022年4月1日~6月30日)において、318例を対象に体液性免疫とT細胞免疫について検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者の年齢中央値は87.0歳、女性の割合は64.4%(483例)、介護施設入所者の割合は57.1%(428例)であった。
・観察期間において、750例中133例(17.7%)にSARS-CoV-2感染が確認された。
・観察期間においてSARS-CoV-2感染が認められなかった617例のうち、観察期間前にSARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する割合は8.9%(55例)であった。一方、観察期間に感染が認められた133例のうち、観察期間前にSARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する割合は57.1%(76例)であった。
・Cox比例ハザードモデルを用いてSARS-CoV-2感染リスクに関連する因子を検討した結果、SARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する人は、観察開始9~29日後におけるSARS-CoV-2感染リスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:47.67、95%信頼区間:23.73~95.76、p<0.0001)。また、mRNA-1273とBNT162b2を組み合わせてワクチンを4回接種した人は、BNT162b2のみで4回接種した人よりも、観察期間中のSARS-CoV-2感染リスクが低かった(同:0.49、0.26~0.90、p=0.023)。
・一方、年齢、性別、居住形態、過去の居住地でのアウトブレイクの有無、オミクロン株以前の株への感染歴、4回目のワクチン接種日は、観察期間中のSARS-CoV-2感染リスクとの関連が認められなかった。
・SARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する人のうち、再感染が認められた人は血清中の抗SARS-CoV-2受容体結合ドメインIgG抗体価、抗スパイクタンパク質IgA抗体価が有意に低く(それぞれp=0.0009、0.0072)、オミクロン株BA.1に対する中和抗体価も低かった(p=0.0072)。すなわち、再感染者は体液性免疫応答の誘導が弱かった。

(ケアネット 佐藤 亮)