出産から5年未満の乳がん、術前化療の効果乏しく再発リスク増/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/20

 

 閉経前乳がん患者を対象に、最終出産からの経過年数と術前化学療法の感受性を検討した結果、出産から5年未満に診断された患者では術前化学療法の感受性が乏しく、再発率が高かったことを、岡山大学の突沖 貴宏氏が第31回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 妊娠・出産から数年以内に乳がんと診断された妊娠関連乳がんの特徴として、腫瘍径が大きい、リンパ節転移やリンパ管侵襲が多い、HR-の割合が高い、病勢が進行した症例が多い、早期例でも遠隔再発リスクが高い、などが報告されている。しかし、妊娠関連乳がんにおける薬物療法の感受性を検討したデータは乏しい。そこで研究グループは、それらの再発率が高い理由として、最終出産からの経過年数が少ない症例は化学療法の効果が乏しいという仮説を立て、最終出産からの経過年数と術前化学療法の感受性の検討を行った。

 対象は2010年1月~2020年12月に術前化学療法を受けた50歳未満の乳がん患者233例であった。出産歴の有無と最終出産からの年数によって、(1)出産歴なし群、(2)最終出産から5年未満群、(3)5年~10年群、(4)10年以上経過群の4群に分け、術前化学療法の画像効果判定、残存腫瘍量(RCB)の関連性を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は、出産歴なし群101例(年齢中央値:34.6歳)、5年未満群41例(35.0歳)、5~10年群50例(37.9歳)、10年以上群41例(41.7歳)であった(以下同じ順番)。HER2+は36%、39%、44%、42%で、トリプルネガティブ(TNBC)は38%、37%、41%、17%であった。
・術前化学療法のRECISTによる治療効果判定は、CRが40%、24%、38%、25%、PDが7%、3%、6%、8%で、5年未満群でCRの割合が低かった。サブタイプ別では、HER2+の多くの患者がPR以上の効果を得られていたが、TNBCで出産歴のある患者ではPDの割合が高かった(6%、13%、12%、28%)。
・RCB II/IIIの割合は52%、61%、54%、59%であり、5年未満群でRCBスコアが悪い傾向にあった(p=0.09)。サブタイプ別では、TNBCで出産歴のある患者ではRCB II/IIIの割合が高く(ハザード比[HR]:0.28、95%信頼区間[CI]:0.12~0.56、p<0.001)、術前化学療法の治療効果が悪い可能性が示唆された。出産歴のある症例で比較すると、5年未満のLuminalタイプはRCB II/IIIの割合が高い傾向にあった(HR:0.57、95%CI:0.26~1.14、p=0.102)。
・遠隔再発率は19%、37%、22%、4%であり、5年未満群の再発率が有意に高かった(p<0.01)。サブタイプ別では、TNBCで出産歴のある患者では、TNBCで出産歴のない患者と比べて遠隔再発率が有意に高く(HR:0.28、95%CI:0.12~0.56)、とくに5年未満群のTNBCでnon-CR症例は再発を来しやすかった(HR:0.73、95%CI:0.26~1.75)。

 これらの結果より、突沖氏は「本研究は後ろ向き探索研究であるが、最終出産から5年未満で診断された乳がん症例では化学療法の感受性が乏しいことが示唆され、治療の上乗せが必要となる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)