高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/14

 

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。

 本研究は、スペインの頭痛治療施設18施設からプロスペクティブにデータを収集し、レトロスペクティブに分析を実施した観察研究である。対象は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療を開始した65歳以上の片頭痛患者。主要エンドポイントは、治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛に数の減少および副作用の発生とした。副次的エンドポイントは、頭痛の軽減、治療3ヵ月および6ヵ月後の薬剤投与頻度、治療反応率、患者報告による転帰の変化、治療中止理由とした。サブ分析として、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少と副作用発現率を薬剤間で比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者数は162例(年齢中央値:68歳、範囲:65~87歳、女性の割合:74.1%)であり、脂質異常症(42%)、高血圧症(40.3%)、糖尿病(8%)、心血管虚血性疾患(6.2%)などの既往歴が認められた。
・治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛の数の減少は、10.1±7.3日であった。
・副作用が認められた患者の割合は25.3%、いずれも軽症で、血圧上昇は2例のみであった。
・患者報告では、頭痛および薬剤の投与頻度の有意な減少が報告され、転帰の改善が認められた。
・1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少率別の患者割合は、以下のとおりであった。
 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数30%以上減少:68%
 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数50%以上減少:57%
 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数75%以上減少:33%
 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数100%減少:9%
・治療6ヵ月後の治療継続率は、72.8%であった。
・片頭痛日数の減少は、各薬剤同様であったが、フレマネズマブの副作用発現率は低かった(7.7%)。

(鷹野 敦夫)