肺機能と認知症リスク~43万人超のコホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2023/04/18

 

 脳の認知的な健康に、肺機能が他の因子と独立して影響を及ぼすかはよくわかっていない。中国・青島大学のYa-Hui Ma氏らは、肺機能と脳の認知的な健康の縦断的な関連性を評価し、根底にある生物学的および脳の構造的なメカニズムを明らかにしようと試みた。その結果、認知症発症の生涯リスクに対する個々の肺機能の影響が確認され、著者らは、「最適な肺機能の維持は、健康的な加齢や認知症予防に有用である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年3月号の報告。

 UK Biobankのデータより、肺機能検査を実施した非認知症の43万1,834人を対象に、人口ベースのコホート研究を実施した。肺機能低下の認知症発症リスクを推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。炎症マーカー、酸素運搬指数、代謝物、脳の構造によって引き起こされる根本的なメカニズムの調査には媒介分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・373万6,181人年のフォローアップ期間中(平均:8.65年)に、すべての原因による認知症は5,622人(1.30%)であった(アルツハイマー型認知症:2,511人、血管性認知症:1,308人)。
・単位時間当たりの肺機能測定値の低下は、すべての原因による認知症リスクの増加と関連が認められた。
 【1秒量(努力肺活量の1秒量)】ハザード比[HR]:1.24、95%信頼区間[CI]:1.14~1.34、p=1.10×10-07
 【努力肺活量】HR:1.16、95%CI:1.08~1.24、p=2.04×10-05
 【最大呼気流量】HR:1.0013、95%CI:1.0010~1.0017、p=2.73×10-13
・肺機能の低下は、アルツハイマー型認知症および血管性認知症のリスクにおいても、同様の推定ハザード比を示した。
・根底にある生物学的メカニズムとして、炎症マーカー、酸素運搬指数、特定の代謝産物は、認知症リスクに対する肺機能の影響を媒介する因子であった。
・認知症で主に影響を受ける脳の灰白質および白質のパターンは、肺機能により大きな変化が認められた。
・最適な肺機能を維持することは、健康的な加齢や認知症予防に役立つ可能性が示唆された。

(鷹野 敦夫)