オミクロン株BQ.1.1とXBBに対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/12/09

 

 新型コロナウイルス感染症の第8波では、オミクロン株BA.5がまだ主流ではあるものの、主に欧米で見られるBQ.1.1系統(BA.5系統から派生)や、インドやシンガポールなどのアジア諸国で急激に増加しているXBB系統(BA.2系統から派生)の感染例が、国内でも徐々に増加している。河岡 義裕氏らによる東京大学、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所、米国ウィスコンシン大学が共同で行った研究において、患者から分離したBQ.1.1とXBBに対して、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、抗体薬はいずれも感染を阻害しなかったが、抗ウイルス薬は高い増殖抑制効果を示した。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年12月7日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

 試験薬剤は、抗体薬のソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブ、bebtelovimab、抗ウイルス薬のレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルである。

 今回の試験では、患者から分離したBQ.1.1とXBBに対する治療薬の効果について、新型コロナウイルスの従来株(中国武漢由来の株)、オミクロン株BA.2、BA.5のそれぞれに対する効果と比較した。抗体薬について、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、抗ウイルス薬について、ウイルスの増殖を阻害するかどうかを、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

【抗体薬】
・BQ.1.1とXBBに対するソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブの中和活性は、いずれも著しく低かった。
・bebtelovimabは、BA.2とBA.5に対して高い中和活性を維持していたが、BQ.1.1とXBBに対する中和活性は著しく低かった。

【抗ウイルス薬】
・BQ.1.1に対するレムデシビルは、従来株に対する本剤の0.6倍のIC50の値となり、高い効果を示した。モルヌピラビルでは1.1倍、ニルマトレルビルでは1.2倍となり、従来株とほぼ同等のIC50の値を示した。
・XBBに対しては、レムデシビルでは0.8倍、モルヌピラビルでは0.5倍のIC50の値となり、従来株より高い効果を示した。ニルマトレルビルでは1.3倍のIC50の値を示した。
・これら3種類の抗ウイルス薬のBQ.1.1とXBBに対する効果は、BA.2とBA.5に対する効果を上回るものだった。

 抗ウイルス薬のレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルは、オミクロン株から新たに派生したBQ.1.1とXBBに対して、いずれも高い増殖抑制効果が認められた。また、著者は本結果について、BQ.1.1とXBBが、BA.2とBA.5を含む以前の系統よりも優れた免疫回避力を持っていることが示唆され、オミクロン株の継続的な変異に対して、新たな治療用モノクローナル抗体の必要性が高まっていると指摘している。

(ケアネット 古賀 公子)