統合失調症に対するアリピプラゾールの適切な投与量~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2022/11/11

 

 薬理学の基本は、薬物の血中濃度と効果との関係であると考えられるが、多くの臨床医において、血中濃度測定の価値は疑問視されているのが現状である。そのため、治療基準用量の検討が、十分に行われていないことも少なくない。ドイツ・ハイデルベルク大学のXenia M. Hart氏らは、統合失調症および関連障害患者における脳内の受容体をターゲットとする抗精神病薬アリピプラゾールの血中濃度と臨床効果および副作用との関連を評価するため、プロトタイプメタ解析を実施した。その結果、ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により血中および脳内の有効濃度に達することが示唆された。Psychopharmacology誌2022年11月号の報告。

 アリピプラゾールの経口剤および注射剤についての関連文献をシステマティックに検索し、レビューを行った。3,373件の血中濃度データを収集し、薬物動態の影響を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・適格基準を満たしたコホート研究は、53件であった。
・経口剤の血中濃度に関する研究が29件、注射剤の血中濃度に関する研究が15件、PETによる研究が9件であった。
・血中濃度、有効性、副作用との関連について、相反するエビデンスが報告されていた。
・集団ベースのリファンレンス範囲は、神経画像データおよび個別の有効性に関する研究から知見とほぼ一致していた。
・統合失調症および関連障害の治療に対するアリピプラゾールおよび活性代謝物の治療基準用量は、それぞれ120~270ng/mL、180~380ng/mLであることが示唆された。
・アリピプラゾールの経口剤および長時間作用型注射剤の治療モニタリングには、個人差の大きさやCYP2D6遺伝子型が影響すると考えられる。
・ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により、血中および脳内の有効濃度に達し、代謝不全患者の場合には、5mg程度で十分である可能性が示唆された。

(鷹野 敦夫)