3回目接種3ヵ月後、日本の医療従事者での抗体価は

提供元:ケアネット

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公開日:2022/04/18

 

 追加接種(3回目接種)前に400U/mL前後だった抗体価は、追加接種1ヵ月後には2万~3万U/mLに増加し、3ヵ月後にはコミナティ筋注(ファイザー)、スパイクバックス筋注(モデルナ)ともにおおむね半分の1万~1万5,000U/mLに低下していることが報告された。なお追加接種約1ヵ月後の抗体価は、スパイクバックス筋注接種者で統計学的に有意に高値であった。1~2回目にコミナティ筋注を接種した国立病院機構(NHO)、地域医療機能推進機構(JCHO)の職員における前向き観察研究によるもので、順天堂大学の伊藤 澄信氏が4月13日開催の第78回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)で報告した。

<研究概要>
新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)にかかわる免疫持続性および安全性調査(コホート調査)
調査内容:
・体温、接種部位反応、全身反応(日誌)、胸痛発現時の詳細情報
・副反応疑い、重篤なAE(因果関係問わず)のコホート調査による頻度調査
・SARS-CoV-2ワクチン追加接種者の最終接種12ヵ月までのブレークスルー感染率、重篤なAE(因果関係問わず)、追加接種者の最終接種12ヵ月後までのCOVID-19抗体価(調査対象者の一部、予定)
・抗体価等測定のための採血は接種前、1、3、6、12ヵ月後(予定)
調査対象:初回接種としてコミナティ筋注、追加接種としてコミナティ筋注またはスパイクバックス筋注を受けたNHO、JCHO職員
・今回の報告のデータカットオフは2022年4月1日

 抗体価の推移について主な結果は以下の通り。

[コミナティ筋注を追加接種]
・追加接種としてコミナティ筋注の投与を受けたのは2,931人(医師16.0%/看護師45.6%、女性68.0%、20代19.5%/30代25.0%/40代25.9%/50代21.2%/60歳以上8.4%)。
・このうち抗N抗体陰性の487人について抗S抗体価をみたところ、追加接種前幾何平均抗体価は386U/mL(95%CI:357~418)だったのに対し、追加接種1ヵ月後は19,771U/ mL(18,629~20,984)となり、幾何平均抗体価倍率は51.2(47.7~55.1)倍だった。
・年代別にみると、追加接種前は20代で634U/mLだったのに対し60歳以上では232 U/mLと年齢が高いほど低く、追加接種1ヵ月後では20代で22,474U/mL(追加接種前の35.4倍)、60歳以上では22,381U/mL(96.3倍)だった。
・接種から3ヵ月後の抗体価が測定された440人について、3ヵ月後の幾何平均抗体価は10,376U/mL(9,616~11,196)だった。

[スパイクバックス筋注を追加接種]
・追加接種としてスパイクバックス筋注の投与を受けたのは890人(医師13.9%/看護師41.2%、女性62.1%、20代27.5%/30代26.1%/40代23.7%/50代17.5%/60歳以上5.1%)。
・このうち抗N抗体陰性の482人について抗S抗体価をみたところ、追加接種前幾何平均抗体価は454U/mL(417~494)だったのに対し、追加接種1ヵ月後は29,422U/mL(27,495~31,483)となり、幾何平均抗体価倍率は64.8(60.3~69.7)倍だった。
・年代別にみると、追加接種前は20代で701U/mLだったのに対し60歳以上では294 U/mLと年齢が高いほど低く、追加接種1ヵ月後では20代で32,080U/mL(追加接種前の45.8倍)、60歳以上では33,383U/mL(113.4倍)だった。
・接種から3ヵ月後の抗体価が測定された92人について、3ヵ月後の幾何平均抗体価は14,719U/mL(12,380~17,500)だった。

[全体のまとめ]
・追加接種前抗N抗体が陰性で、追加接種1ヵ月後の抗体価を測定した972人の追加接種前抗体価は年齢が高くなるにつれて低値をとり、女性は高かった(ワクチン種別、2・3回目接種間隔で調整した重回帰分析)。
・3回目追加接種1ヵ月後の幾何平均抗体価はコミナティ筋注19,771U/mL、スパイクバックス筋注29,422U/mL、幾何平均抗体価倍率はそれぞれ51.2倍、64.8倍で、スパイクバックス筋注の方が高かった。抗体価については、性・年齢および接種間隔を調整した重回帰分析で、スパイクバックス筋注の方が統計学的に有意に高値であった。
・3回目接種3ヵ月後抗体価はコミナティ筋注、スパイクバックス筋注とも追加接種1ヵ月後の抗体価に比しておおむね半分に低下した。
・幾何平均抗体価倍率は年齢とともに増加し、結果として1ヵ月後の幾何平均抗体価は年齢ごとの差はわずかで、女性がやや低値だった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)