日本人双極性障害外来患者に対する処方パターン~I型とII型の違い

双極I型障害(BD-I)および双極II型障害(BD-II)患者に対する向精神薬の使用に関して、入手可能なエビデンスは限られている。獨協医科大学の篠崎 將貴氏らは、BD-IおよびBD-IIの外来患者に対する薬物療法、とくに抗うつ薬の使用に関して、その特徴を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年11月23日号の報告。
2017年に実施された日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査(MUSUBI研究)に参加したBD-IまたはBD-IIの外来患者2,774例を対象に、現在の精神状態、治療薬およびその他の要因に関するデータを収集した。
主な結果は以下のとおり。
・気分安定薬、抗精神病薬、抗うつ薬の使用率に関して、有意な差が認められた。
・BD-I患者では、気分安定薬(BD-I:86.0%、BD-II:80.8%、p<0.001)と抗精神病薬(BD-I:61.5%、BD-II:47.8%、p<0.001)の使用率が高く、BD-II患者では抗うつ薬(BD-I:32.1%、BD-II:46.4%、p<0.001)の使用率が高かった。
・BD-I、BD-II患者ともに最も多く使用されていた抗精神病薬はアリピプラゾール、気分安定薬はリチウムであった。
・最も多く使用されていた抗うつ薬は、BD-I患者ではエスシタロプラム、BD-II患者ではデュロキセチンであった。
・BD患者に最も使用されていた抗うつ薬のクラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であった。
・併用療法に関しては、抗うつ薬を含む併用療法がBD-II患者で用いられることが多かった。
著者らは「BD-IとBD-II患者では向精神薬の使用状況に違いが認められた。日本では、BD外来患者に対し気分安定薬や抗精神病薬が使用されており、一般的なガイドラインに準じていた。抗うつ薬の使用効果や躁病エピソードのリスクに関するエビデンスは十分ではなく、さらなるエビデンスの収集が必要とされる」としている。
(鷹野 敦夫)
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