医療従事者のバーンアウトとそれに伴う仕事量の変化

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/02

 

 COVID-19感染流行に収束の兆しが見えない中、医療従事者の燃え尽き症候群(バーンアウト)が問題となっている。COVID-19感染流行前に、医師以外の医療従事者(HCW)における燃え尽き症候群(バーンアウト)と組織への満足度が、その後の仕事量の変化と関連するのかを調査した研究結果が、JAMA Network Open誌2021年8月20日号で報告された。

 米メイヨー・クリニックのLiselotte N. Dyrbye氏らは、米国の複数の州にある地域密着型病院と医療施設において、2015年~2017年にかけてHCW(看護師、理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカー等)を対象に、バーンアウト及び組織への満足度と、その後24ヵ月間の仕事量の変化との関連を探る縦断的コホート研究を実施した。分析は2020年11月25日に完了した。主要アウトカムは、給与記録に記録されるフルタイム換算(FTE)単位で測定される仕事量の変化だった。バーンアウトの診断はMaslach Burnout Inventory(MBI)による情緒的消耗感と脱人格化の測定、組織への満足度は5段階アンケートで測定した。

 主な結果は以下のとおり。

・2万6,280例(45~54歳が7293例[27.8%]、女性2万263例[77.1%])が対象となった。勤続期間は5年未満(8,570例[32.6%])と15年以上(8,115例[30.9%])が多く、6,595例(25.1%)が看護師だった。
・ベースライン時には、5,695例(21.9%)が「情緒的消耗感が強い」、2,389例(9.2%)が「脱人格化が強い」、6,177例(23.8%)が「バーンアウト状態」を示した。組織への満足度は「非常に満足」(9,125例[35.0%])または「満足」(1万3,339例[51.1%])が大半を占めた。
・性別、年齢、雇用期間、職種、ベースライン時のFTEとバーンアウトを調整したところ、ベースライン時のバーンアウト状態(オッズ比[OR]:1.53、95%CI:1.38~1.70、p< 0.001)、情緒的消耗感(OR:1.54、95% CI:1.39~1.71、p<0.001)、脱人格化(OR:1.40、95% CI:1.21~1.62、p<0.001)はその後24ヵ月間のFTE減少と関連していた。
・ベースライン時の組織への満足度は、FTE減少の可能性の低さと関連していた(OR:0.73、95% CI:0.65~0.83、p<0.001)。
・情緒的消耗感の悪化(1ポイントごとのOR:1.12、95%CI:1.10~1.16、p<0.001)、脱人格化の悪化(1ポイントごとのOR:1.10、95%CI:1.06~1.14、p<0.001)、組織への満足度の増加(1ポイントごとのOR:0.83、95%CI:0.79~0.88、p<0.001)を連続測定値としてモデル化しても、同様の結果が得られた。
・FTE減少者の割合が最も高かったのは看護師(1,026/6,595例[15.6%])で、FTE減少者の半数を占めた(1,026/1,997例[51.4%])。

 著者らは「バーンアウトと組織への満足度が、その後の24ヵ月間の仕事量と関連することがわかった。適切な人員配置が非常に重要で、HCWの雇用と訓練に関するコストを考慮すると、バーンアウトを緩和し、職業上の満足度を高める努力は労働力の維持とコスト削減戦略の一環として行うべきであることを示唆している」とし、さらに「FTE減少はとくに看護師において顕著であり、シフト、給与水準、職場の柔軟性などさまざまな要因が寄与している可能性がある。今後は職種(例:正看護師、准看護師)、勤務場所(例:病棟、外来)、その他の要因を分析し、介入策を検討する必要がある」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)