治療抵抗性うつ病に対する併用療法の有効性と忍容性~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2021/08/24

 

 うつ病治療を成功に導くことは困難な場合があり、治療抵抗性うつ病に至るケースは少なくない。治療抵抗性うつ病の治療では、抗うつ薬の増量、他の抗うつ薬の併用、抗うつ薬以外の併用薬の追加、非薬理学的治療の併用が行われる。しかし、これらの相対的な有効性および忍容性は、十分に検討されていなかった。とくに、併用薬であるリチウムと比較した、第2世代抗精神病薬(SGA)およびesketamineの有効性および安全性はよくわかっていない。米国・McLean HospitalのGustavo H Vazquez氏らは、治療抵抗性うつ病に対するSGAおよびesketamine併用療法の有効性および忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。

 ランダム化プラセボ対照試験をレビューした。うつ病エピソードに対し抗うつ薬にSGA、esketamine、リチウムを併用薬として使用した際の、対プラセボのオッズ比(OR)、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)を算出するため、ランダム効果メタ解析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・分析には、49件の併用薬とプラセボの比較データが含まれた。
・NNTについては、SGAはプラセボよりも有用であった(NNT:11、信頼区間[CI]:9~15)。esketamine(NNT:7、CI:5~10)およびリチウム(NNT:5、CI:4~10)は、より有用であった。
・各SGAをみると、アリピプラゾール、オランザピン/fluoxetine、リスペリドン、ziprasidone(各々NNT:10未満)は、クエチアピン(NNT:13)、ブレクスピプラゾール(NNT:16)、cariprazine(NNT:16)よりも有用であった。
・有害事象リスクについては、プラセボと比較したSGA全体でのNNHは5(CI:4~6)であった。各SGAのNNHは、3(クエチアピン)~19(ブレクスピプラゾール)の範囲であった。また、esketamineのNNHは5(CI:4~6)、リチウムのNNHは9(CI:5~106)であった。
・リスク/ベネフィット比(NNH/NNT)は、以下のとおりであった。
 ●リチウム:1.80(CI:1.25~10.60)
 ●esketamine:0.71(CI:0.60~0.80)
 ●SGA:0.45(CI:0.17~0.77)

 著者らは「いくつかのSGAおよびesketamineは、急性うつ病エピソードに対する抗うつ薬の併用薬として有用であったが、リチウムの有効性および忍容性がやや高かった」としながらも「リチウムの併用療法に関する試験の多くは、主に三環系抗うつ薬が使用されており、ベースライン時の最適化がなされていないことに注意する必要がある」としている。

(鷹野 敦夫)