コロナワクチン接種後の中和抗体価、ウイルス株や年齢での違いは?/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/07/29

 

 ファイザー製ワクチン(BNT162b2)を2回接種すると、有効率は約95%だと言われている。その一方で、患者の年齢が新型コロナウイルス感染症の発生率や重症度のリスクに寄与することも知られている。そこで、オレゴン健康科学大学のTimothy A Bates氏らはファイザー製ワクチン2回接種後のUSA-WA1/2020株とP.1系統の変異株(γ株、以下、P.1変異株)に対する年齢と中和抗体価の関係を調べた。その結果、USA-WA1/2020株に対するワクチン接種後の中和抗体価は年齢と負の相関が見られた。一方で、P.1変異株に対する中和抗体価はすべての年齢で減少したが、年齢による差は小さく、全体的にワクチンの有効性に寄与する要因として年齢を特定することができなかった。JAMA誌オンライン版2021年7月21日号リサーチレターでの報告。

 研究者らは、2020年12月~2021年2月、オレゴンワクチン接種ガイドラインに従って実施されたワクチン接種の参加者を対象に調査を行った。参加者はファイザー製ワクチン1回目接種の時点で本研究に登録され、血清サンプルはワクチン1回目を受ける前と2回目を受けてから14日後に収集された。SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン特異的抗体レベルを酵素免疫測定法で測定し、中和抗体50%効果濃度(EC50、ウイルス中和アッセイで50%の感染を阻害する血清希釈)を計算した。新型コロナウイルスの50%中和力価は、USA-WA1/2020株とP.1変異株の生きた臨床分離株を使用した焦点還元中和試験(FRNT50、焦点減少中和検査で50%のウイルスを中和する血清希釈)で決定した。

 主な結果は以下のとおり。

・50例がこの研究に登録された(女性:27例[54%]、年齢の中央値[範囲]:50.5歳[21~82])。
・すべての参加者において、ワクチン接種前のEC50は事前曝露がないことを示す定量限界未満だった。
・ワクチン接種後のEC50は、年齢と有意な負の関連を示した(R2=0.19、p=0.002)。
・USA-WA1/2020株に対しては、全参加者で中和抗体の強い活性が観察され、幾何平均抗体価(GMT:geometric mean antibody titer)は393(95%信頼区間[CI]:302~510)だった。一方、P.1変異株に対しての免疫応答は低く、GMTは91(95%CI:71~116)で、76.8%の減少を示した。
・USA-WA1/2020株とP.1変異株の両方において、年齢はFRNT50と有意に負の相関があった(p<0.001およびp=0.001)。
・USA-WA1/2020株の場合、年少参加者ら(20~29歳、n=8)のGMTは938(95%CI:608~1447)に対し、年長参加者ら(70~82歳、n=9)のGMTは138(95%CI:74~257)と85%の減少を示した(p<0.001)。
・P.1変異株の場合、年少参加者らのGMTは165(95%CI:78~349)に対し、年長参加者らのGMTは66(95%CI:51~86)と60%の減少を示した(p=0.03)。

 研究者らは「中和抗体価は感染からの保護と強く相関していると考えられる。ただし、今回の研究ではサンプル数が少ないこと、閾値がまだ正確に決定されないことを踏まえ、今後の研究では、ワクチン接種を受けた高齢者に見られる抗体レベルの低下が、同時に防御機能の低下につながるかどうかを具体的に取り上げる必要がある」としている。

(ケアネット 土井 舞子)