日本における抗うつ薬とCBT併用療法による費用対効果

うつ病治療において認知行動療法(CBT)の併用は、最初から行うべきか、薬物治療で寛解が得られない患者に行うべきかについて、慶應義塾大学のYoshihide Yamada氏らは、費用対効果の面から検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年6月17日号の報告。
うつ病治療において、最初からCBTと薬物療法を併用したCOMBファースト戦略と、まずは薬物療法で治療を開始し、寛解が得られない場合にCBTを併用したADファースト戦略において、どちらの治療戦略の費用対効果が高いかを調査した。分析を行うため、マルコフモデルを開発した。主要アウトカムは、104週における質調整生存率(QALY)当たりの増分費用対効果(ICER)とした。臨床パラメータに関連する不確実性と結果に対するCBTコストの影響を調査するため、それぞれ確率的感度分析とシナリオ分析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・104週におけるQALY当たりのICERは、中等度のうつ病で59万1,822円(5,725米ドル)、重度のうつ病で49万9,487円(4,832米ドル)であった。
・シナリオ分析では、国立保健医療研究所(NICE)が推奨する基準値(2万~3万ポンド)をはるかに下回るCBTコスト1万4,400円(139米ドル、英国のCBT単価96ポンド)に設定した場合、ICERは中等度のうつ病で114万7,518円(1万1,101米ドル)、重度のうつ病で96万8,484円(9,369米ドル)となった。
・本研究の限界として、健康保険の観点から実施したモデルベースの分析であり、社会的観点からの分析では、異なる結果が得られる可能性がある。
著者らは「COMBファースト戦略は、ADファースト戦略よりも費用対効果が高いことが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)
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