統合失調症患者における持続性注射剤使用と刑事事件遭遇との関連

統合失調症患者では、アドヒアランスが不良な場合が多い。このことが、再発リスク、健康状態の悪化、入院、治療費の高騰、暴力的および非暴力的な犯罪の発生率上昇に影響を及ぼす。米国・ケント州立大学のMadhav P. Bhatta氏らは、統合失調症または統合失調感情障害患者における持続性注射剤(LAI)抗精神病薬の使用と刑事事件遭遇との関連について、調査を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2021年5月19日号の報告。
2010年1月1日~2016年6月15日にオハイオ州アクロンの地域精神保健センターで統合失調症または統合失調感情障害のために治療を受けた18歳以上の患者を対象に、レトロスペクティブフォローアップ研究を実施した。LAI抗精神病薬開始前後6ヵ月、1年、2年での刑事事件遭遇率を評価した。過去に逮捕歴を有する患者を対象に、サブ解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・全体として、LAI抗精神病薬治療開始1、2年後に刑事事件に遭遇するリスク比(RR)は、開始前の同一期間と比較し、有意に低かった。
●1年後のRR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p<0.01
●2年後のRR:0.74、95%CI:0.62~0.88、p<0.0001
・月1回パルミチン酸パリペリドンのコホートにおける刑事事件遭遇率は、治療前よりも治療後に有意な減少が認められた。
・過去に逮捕歴を有する患者では、LAI抗精神病薬治療開始6ヵ月、1、2年後の逮捕事例発生率は、開始前の同一期間と比較し、有意に低かった。
●前後6ヵ月逮捕事例発生率:27件vs.85件
●前後1年逮捕事例発生率:46件vs.132件
●前後2年逮捕事例発生率:88件vs.196件
著者らは「LAI抗精神病薬治療を受けた統合失調症または統合失調感情障害患者では、LAI開始前と比較し、刑事事件に遭遇する可能性が有意に低かった」としている。
(鷹野 敦夫)
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