依存症の衝動性に対する認知機能改善介入~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2021/05/10

 

 衝動的な行動や選択に対する3つの認知機能介入アプローチ(コンピューター化された認知トレーニング、認知矯正療法、薬理学的な認知機能介入)の効果を評価し、それらの比較検討を行うため、オーストラリア・モナシュ大学のAlexandra C. Anderson氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Addiction誌オンライン版2021年3月10日号の報告。

 物質使用障害またはギャンブル依存症の治療を求めている成人患者を対象として認知機能改善介入を評価した研究を抽出した。主要アウトカムは、介入後に検証した衝動的な行動または選択に関する認知機能スコアの減少とした。バイアスリスクは、Cochrane Collaborationツールを用いて評価し、選択した研究よりプールした推定値を決定した。衝動的な行動および選択の結果について、ランダム効果分析を実施し、モデレーター分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・特定された研究2,204件のうち、60件を全文レビューした。
・適格基準を満たしていた研究23件のうち、16件をメタ解析に含めた。
・分析対象研究の内訳は、以下のとおりであった。
 ●コンピューター化された認知トレーニング:5件、236例
 ●認知矯正療法:3件、99例
 ●モダフィニルによる薬理学的介入:4件、160例
 ●ガランタミンによる薬理学的介入:4件、131例
・研究期間は、5日~13週間の範囲であり、即時フォローアップ評価が行われていた。
・ギャンブル依存症を対象とした研究は、確認されなかった。
・66例が参加した2つの研究のみで、認知矯正療法の衝動的な選択に対する有用性が認められた(標準化平均差:0.86、95%CI:0.49~1.23、p=0.02、I2=0%、p=0.95)。

 著者らは「依存症の衝動性の調整に対し、コンピューター化された認知トレーニングや薬理学的介入の効果は認められず、認知矯正療法のみが、依存症の衝動的な選択に有用な治療法である可能性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)