双極性障害の再発に対する抗精神病薬併用の影響~メタ解析

藤田医科大学の岸 太郎氏らは、気分安定薬(MS)と第2世代抗精神病薬(SGA)の併用療法で安定した双極I型障害におけるSGA中止による再発リスクへの影響を検討するため、二重盲検ランダム化対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Bipolar Disorders誌オンライン版2021年2月9日号の報告。
SGA+MS療法で安定した双極I型障害患者を対象に、維持期においてSGAを中止した患者(MS単独療法など)と継続した患者における再発リスクを検討した研究を、Embase、PubMed、CENTRALより、システマティックに検索した(2020年5月22日まで)。主要アウトカムは、6ヵ月間の気分エピソード再発率とした。副次的アウトカムは、6ヵ月間の躁/軽躁/混合エピソードとうつ病エピソードの再発率およびすべての原因による治療中止とした。また、1、2、3、9、12ヵ月での再発率も調査した。
主な結果は以下のとおり。
・8件の研究が抽出された(平均研究期間:58.25±33.63週間)。
・SGA+MS群は1,456例、プラセボ+MS群は1,476例であった。
・併用されたSGAは、アリピプラゾール(3件)、ルラシドン(1件)、オランザピン(1件)、クエチアピン(2件)、ziprasidone(1件)であった。
・プールされたSGA+MS群では、すべての観察期間を通じて、気分エピソード、躁/軽躁/混合エピソード、うつ病エピソードの再発率が低く、すべての原因による治療中止が少なかった。
・6ヵ月時点での再発率のリスク比(RR)は、各エピソードで以下のとおりであった。
●気分エピソード:0.51(95%CI:0.39~0.86)
●躁/軽躁/混合エピソード:0.42(95%CI:0.30~0.59)
●うつ病エピソード:0.39(95%CI:0.28~0.54)
・すべての原因による中止のRRは、0.67(95%CI:0.50~0.89)であった。
・アリピプラゾールまたはクエチアピンとの併用療法は、プラセボ+MS群と比較し、6ヵ月時点での気分、躁/軽躁/混合、うつ病エピソードの再発率が低かった。
著者らは「SGA+MS療法は、双極I型障害の再発を最大12ヵ月間抑制することが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)
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