双極性障害とうつ病を鑑別するための感情調節神経回路の調査

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/12

 

 双極性障害(BD)患者の最大40%は、最初にうつ病と診断されており、情緒不安定は両疾患で共通して認められる。しかし、認知的再評価による感情調節の違いが、BDとうつ病を鑑別するのに役立つかは、よくわかっていない。オーストラリア・シドニー大学のSabina Rai氏らは、寛解期BD患者とうつ病患者の感情調節について、調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年12月25日号の報告。

 年齢、性別、うつ病重症度をマッチさせた寛解期BD患者38例、寛解期うつ病患者33例、健康対照者37例を対象に、fMRIスキャン中の感情調節認知再評価タスクを調査した。対象者には、画像の再評価(Think条件)、ネガティブな画像を受動的に見る(Watch条件)、ニュートラルな画像を受動的に見る(Neutral条件)のいずれかを行い、その影響を評価した。感情調節に特有の神経回路における再評価(Think条件vs.Watch条件)および反応性評価(Watch条件vs.Neutral条件)についてグループ間での違いを調査するため、放射化分析、結合性解析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・グループとは無関係に、Watch条件では、Think条件およびNeutral条件と比較し、最もネガティブに評価した。また、Neutral条件と比較し、Think条件では、よりネガティブな評価であった。
・とくに、BD患者では、うつ病患者と比較し、再評価における前帯状皮質膝下部(sgACC)活性の低下が認められたが、反応性評価においては、sgACC活性がより大きかった。
・うつ病患者では、BD患者と比較し、反応性評価において右扁桃体の活性がより大きかった。
・タスク関連の連結性は、グループ間で差は認められなかった。

 著者らは「寛解期BD患者およびうつ病患者は、感情的な情報を処理および調整するうえで、異なる脳領域と関与していることが示唆された。これらの違いは、両疾患を鑑別し、BDの根底にある病態生理への新たな洞察を検討するうえで役立つ可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)